調殿駿
調殿駿
さめ切ぬ其中に又候や御機嫌きげんをそこなふたそふなれど弁慶が身に取てぶ調法てうほうせし覚へなしヤア覚なしとはいはれまい鎌倉殿と義経が兄弟の不を取むすばんと川越が実義じつぎ卿の君が最期さいご無下むげにして義経が討手にのぼりし鎌倉勢をなぜ切た是でも汝があやまで有まいかサア返たうせよ坊主めとはつたとにらんのたまへば武蔵は返す詞もなくかしらも上ず居たりしがはゞかりながら其事を存ぜぬにてはあらね共正しく御所の討手としてのぼつたる土佐坊いかに御意がおもい迚主君をねらふをまじ〱と見て居る者の有べきかさある時は日本に忠義の武士は絶果たへはてなんあやまりならば幾重いくゑにもお詫言わびごと仕らんいかに御家来なれば迚あんまりむごいしかりやう是といふも我君の漂白へうばくよりおこつた事無念〱とこぶしにぎついに泣ぬ弁慶がたしない涙をこぼせしは忠義故とぞしられける静も武蔵が心をさつしあれ程にいふてじやのにどうぞマア御了簡りやうけんとやはらかな詫言わびことの其尾に付て亀井駿河御免〱とわびければ義経おもてをやはらげ給ひ母が病氣で古郷こきやうへ帰りし四郎兵衛忠信を我が供に召つれなば武蔵が詫は聞ね共行先が敵となつて一人でもよき郎等ろうどうを力にするせつなれば此度はゆるし置と仰に弁慶はつと計に頭をさげ坊主天窓あたまなで廻し是にこりよ武蔵坊アヽ静様はちう々の詫言いかゐお世話せわと悦べばマアお詫がすんでめでたい是

地:又候や,ハル:又候や地/ハル

ウ0:ウ0

ウ:弁慶が

ウ:覚へなし

詞:ヤア

地:はつたと,ハル:はつたと地/ハル

ウ:武蔵は

中:頭も,フシ:頭も中/フシ

詞:憚ながら

地:いかに,ウ:いかに地/ウ

ハル:見てハル

ウ:さ

ウ:忠義の

ウ:誤りならば

ウ:いかに

ウ:余り

ウ:是と

ウ:おこつた

ウ:無念

ウ:終に

ウ:こぼせしは

フシ:忠義フシ

地色:静も,ウ:静も地色/ウ

ハル:あれハル

ウ:御了簡

ウ:詫言の

ウ:亀井

スヱテ:河御スヱテ

スエテ:御免スエテ

中:詫ければ

ハル:義経ハル

色:やはらげ給ひ

色:給ひ

詞:母が

地:仰に,ノル:仰に地/ノル

ウ:頭を

ウ:坊主

ウ:是

ウ:アヽ

中:いかゐ,フシ:いかゐ中/フシ

地色:マア,ウ:マア地色/ウ

ハル:是ハル