殿退駿殿
殿退駿殿
あへなきさいごも義経が身の云訳いひわけなるにはやまつて弁慶が海野の太郎を討たる故やむ事を得ず都をひらくは親兄しんけうの礼を思ふ故此後は猶以て鎌倉勢に刃向はむかはゞ主従しう〲の縁も夫ぎりと仰に二人もうでなでさすりこぶしにぎつてひかゆる折から義経の御跡をしたこがれて静御前こけつまろびつ来りしが夫と見るよりすがり付どうよくな我君としば涙にむせびしが武蔵殿をせいせよとわしをやつた其跡で早御所をお退のきと聞二里三里おくれう共追は女の念よふも〱むごたらしう此静を捨置てふたりの衆も聞へませぬわしも一所に行様に取なしいふて下さんせとなげけばともに義経も情によはる御見て取て駿河次郎ヲヽ主君も道すがらうはさなきにはあらね共行道筋も敵の中取分て落行先多武たふみねの十字坊女義を同道どう〱なされては寺中じちうの思はくいかゞ也とすかしなだむる時しもあれ武蔵坊弁慶いきを切て馳着はせつき土佐坊海野を仕舞しまふてのけんと都に残り思は遅参ちさん仕ると云もあへぬに御大将扇を以ててう〱となぐり情も荒法師あらほうしを目はなもわかずたゝき立坊主びく共うごいて見よ義経が手討にすると御いかり顔色がんしよくに思ひがけなき武蔵坊はつと恐れ入けるが此間大内にて朝方殿に悪口あつこうせし迚御勘当かんどうなが出仕しゆつしせざりしが静様の詫言わびことで御免有たはきのふけふ其勘当のぬくもりが手の中にほの〲とまだ

地:親兄の,ウ:親兄の地/ウ

ウ:此

ハル:鎌倉勢にハル

ウ:主従の

ウ:夫

ウ:腕

フシ:拳をフシ

地色:義経の,ハル:義経の地色/ハル

ウ:静御前

ウ:来りしが

ウ:夫と

上:どうよくな

スヱ:暫しスヱ

中:むせびしが

ウ:武蔵殿を

ハル:わしをハル

ウ:早

ウ:おくれう

ウ:追付は

ウ:むごたらしう

ウ:捨置て

上:わしも

ウ:いふて

中:義経も

フシ:よはるフシ

地色:見て,ハル:見て地色/ハル

色:駿河次郎

色:次郎

詞:ヲヽ

地:すかし,ウ:すかし地/ウ

ハル:時しもハル

ウ:武蔵坊

色:馳着

詞:土佐坊

地:云も,ウ:云も地/ウ

ハル:扇をハル

ウ:荒法師を

ウ:目鼻も

色:ずたゝき

色:たゝき立

ウ:坊主

ウ:御怒の

ハル:武蔵坊ハル

フシ:はつとフシ

詞:此