やを以て敵をみしやぎ大鋸にて人を引切討手の大将海野の太郎をてつぺいからつま先迄擲砕いて候と申上れば大将あきれ川越太郎ははつと計へヱしなしたりひろいだり討手の大将討取ては御連枝和睦の願ひも叶はず不便や娘も全なき犬死是非もなき世の有様と悔涙に義経公古人は人を恨ず傾く運のなすわざと思へば恨も悔もなし武蔵が不骨を幸に都をひらかば綸命も背かず兄頼朝の怒りもやすまる是是を思へば卿の君が最期残り多やと御涙皆夢の世の有為転変我も浮世に捨られて駅路の鈴の音きかん亀井駿河供せよと立出給へば川越太郎しほれながら暫しと留め床にかざりし鼓たづさへ君多年御懇望有し重宝残し置れては取落されしと申も残念院勅に打といふ声有とは皮より穢れし讒者の詞打を拙者がしらべかへふたゝび御連枝ぐはいの取持長路の旅の御物わすれと心をこめて指出す義経御手にふれ給ひしたしき兄弟の因をば打切るゝも運のつき結びかへせよ川越と駿河亀井をお供にてすご〱館を出給ふ御心根のいたはしさ見おくる人も鎌倉へ是非なく〱も立帰る世の成行ぞ是非もなき跡は貝がね鯨波しんどうするも理りや武蔵坊弁慶が海
やを以ツて敵をみしやぎ大鋸にて人を引切リ討手の大将海野の太郎をてつぺいからつま先キ迄擲砕いて候と申上れば大将あきれ川越太郎ははつと計リへヱしなしたりひろいだり討手の大将討取ツては御連枝和睦の願ひも叶はず不便や娘も全なき犬死是非もなき世の有様と悔涙に義経公古人は人を恨ず傾く運のなすわざと思へば恨も悔もなし武蔵が不骨を幸に都をひらかば綸命も背かず兄頼朝の怒りもやすまる是是を思へば卿の君が最期残り多やと御涙皆夢の世の有為転変我も浮世に捨られて駅路の鈴の音トきかん亀井駿河供せよと立出給へば川越太郎しほれながら暫しと留め床にかざりし鼓たづさへ君多年御懇望有し重宝残し置れては取落トされしと申スも残念院勅に打ツといふ声有リとは皮より穢れし讒者の詞打ツを拙者がしらべかへふたゝび御連枝ぐはいの取リ持長路の旅の御物わすれと心をこめて指出す義経御手にふれ給ひしたしき兄弟の因をば打切ラるゝも運のつき結びかへせよ川越と駿河亀井をお供にてすご〱館を出給ふ御心根のいたはしさ見おくる人も鎌倉へ是非なく〱も立帰る世の成リ行キぞ是非もなき跡は貝がね鯨波しんどうするも理りや武蔵坊弁慶が海
地:申上れば,ハル:申上れば地/ハル
ウ:川越ウ
色:ひろいだり色
詞:討手の詞
地色:是非も,中:是非も地色/中
ハル:有様ハル
中:義経公中
詞:古人は詞
地:是是,ハル:是是地/ハル
上:残り上
ウ:御涙ウ
中:皆,ウ:皆中/ウ
ウ:駅路のウ
ハル:鈴のハル
ウ:きかんウ
フシ:立出,ハル:立出フシ/ハル
地:川越,ウ:川越地/ウ
ハル:しほれながらハル
中:暫しと留め中
中:留め中
ウ:床にウ
ハル:鼓,色:鼓ハル/色
詞:君詞
地:ふたゝび,ウ:ふたゝび地/ウ
ハル:ぐはいのハル
フシ:心をフシ
地:義経,ハル:義経地/ハル
色:ふれ色
詞:したしき詞
地:駿河,ウ:駿河地/ウ
ハル:御心根のハル
ウ:見おくるウ
ウ:人もウ
ウ:なく〱もウ
ウ:立帰るウ
フシ:是非もフシ
地:跡は,ハル:跡は地/ハル
色:理りや色
ハル:武蔵坊ハル
ウ:海ウ