駿殿殿駿
あかの他人のお手をかるもふかき御縁とてもの事にたつた一こと親子の名のり未来みらいでせうさらば〱さらばさらば〱と討首よりもからだは先へ川越がどうど座してぞしほれ居る心ぞ思ひやられたり静御前も義経も歎しづみ給ふ折からみゝつきぬくかね太鼓たいこときをどつとぞ上にけるコハいかにと静は仰天げうてん君もおどろき扨は海野土佐坊めせめかけしと覚たり亀井駿河と仰の内よりおつ取刀で両人が表をさしてかけ出るをヤレ待れよと太郎は呼留よびとめ仰分を聞迄はと留しをせめかけたは彼等も讒者ざんしやと一やからとはいへ両人鎌倉殿の名代めうだいあやまちては敵対てきたいするも同前只すみやかに追かへすかおどしの遠矢でふせがれよさないとたちまち義経ぎけいあたと云ふくむれば両人は尤道理とのみこんで表をさしてかけり行義経公も川越が詞至極しごくと猶も氣を付無分別むふんべつの弁慶が心元なし武蔵〱と呼給へばこしもと立出武蔵殿は最前より打しほれ居られしがときのこへを聞とはや悦びいさんで行れしと聞よりこいつ事仕出ん静参つて急ぎせいせよ矢あやうしソレよろひはつとこしもと持出る其間に長押なげしの長刀かい込はしる女武者むしや堀川夜討に静がはたら末世まつせにいふも是ならんいかゞとあんじ給ふ所へ亀井駿河かけもど我々味方をせいしてまと矢をさせ追帰さんと存ぜし所武蔵坊の無法むほう玄翁げんのうかけ

::さ:

地:〱,上:〱地/上

入:討

ウ:どうど

中:心ぞ,フシ:心ぞ,ノル:心ぞ中/フシ/ノル

ハル:思ひやられたりハル

地色:静御前も,ハル:静御前も地色/ハル

中:折から

ウ:耳を

ハル:鐘ハル

フシ:ときをフシ

地:コハ,中:コハ,ウ:コハ地/中/ウ

ハル:仰天ハル

色:驚

ウ:扨は

ハル:責かけしとハル

色:覚たり

ウ:亀井

ハル:おつ取ハル

ハツミ:表をハツミ

詞:ヤレ

地:とはいへ,ウ:とはいへ地/ウ

ウ:有ては

ウ:おどしの

ハル:さないとハル

フシ:表をフシ

地:義経公も,ハル:義経公も地/ハル

ウ:猶も

色:氣を

詞:無分別の

地:呼,ハル:呼地/ハル

色:妼

詞:武蔵殿は

地:聞より,ウ:聞より地/ウ

ウ:矢先

ハル:はつハル

中:持出る

フシ:其,ハル:其フシ/ハル

中:長押の

ハル:長刀ハル

ウ:表へ

ウ:堀川

フシ:末世にフシ

地:いかゞと,ハル:いかゞと地/ハル

ウ:亀井

色:かけ

詞:我々,ノル:我々詞/ノル