廿
に成かはり過言くはごんゆるす尋て見よ申ひらかん遠慮ゑんりよ無用むようと仰に猶も平伏へいふく冥加めうが余る仕合迚の事に御座あらため下されよとせきを立ば大将も末座はつざへさがつて川越を上座へこそは請ぜらるせきあらたまつて川越太郎いかに義経平家の大敵をほろぼ軍功ぐんこうを立ながら腰越こしこへより追かへされ無念にあらん但さもなかりしがはつと義経袖かき合せ親兄しんきやうの礼をおもんずれば無念な共存ぜずヤア其詞虚言きよごん親兄しんきやうの礼をおもんずる者が平家の首の内新中納言知盛なごんとももり三位中将惟盛これもり能登守教経のとのかみのりつね此三人の首はにせ者なぜいつはつて渡したぞまつ此通の御立腹サア御返答はと尋ればホヲヽ其云訳いひわけいと安しにせ首を以まこととしまことを以にせとするは軍慮ぐんりよ奥義おうぎ平家は廿四年の栄花ゑいぐはほろうせても旧臣倍きうしんばい臣国々へ分散ふんさんし赤はたのへんぽんする時を待の中にも三位中将惟盛は小松の嫡子ちやくしで平家の嫡流ちやくりう殊に親重盛じんを以て人をなつけ厚恩かうおんの者其数をしらず惟盛ながらへとしらば残党ざんとうふたゝび取立るは治定ぢぢやう又新中納言知盛能登守教経は古今こゝん独歩どつぽのゑせ者大将の器量きりやうまねきにしたが馳集はせあつまる者おゝからんさすれば天下おだやならずいづれも入水じゆすい討死と世上の風聞ふうぶんに一残らず討取しとにせ首を以あざむきしは一たん天下をせいひつさせん義経が計略けいりやくと有て捨置れぬ大敵故熊井わし伊勢片岡

地:仰に,ハル:仰に地/ハル

色:平伏

詞:冥加に

地:席を,ハル:席を地/ハル

ウ:大将も

ウ:川越を

フシ:上座へフシ

地:席,ハル:席地/ハル

ウ:川越

色:いかに

詞:平家の

地:はつと,ハル:はつと地/ハル

色:かき合せ

詞:親兄の

地:其,ハル:其地/ハル

色:いと

詞:贋首を

地色:殊に,中:殊に地色/中

ハル:厚恩のハル

中:惟盛,ウ:惟盛中/ウ

ハル:取立るはハル

色:治定

詞:又

地色:さすれば,ウ:さすれば地色/ウ

ウ:ならず何

ウ:何れも

ハル:世上のハル

ウ:一門

ウ:贋首を

色:欺しは

詞:一旦