扨重盛様が今迄生てござらふなら平家はよもや亡びはせじ孫子の為にもよからふにあなたがござらぬばつかりで此憂目を見るわいのと絵像に向ひ在がごとくくどき立〱かつばと伏て泣給ふ折節表へくる足音ちやつと心得主の尼枕屏風を引廻しお姿隠す間もなく扉引明ずつと這入コレ〱庄屋殿へ判もてごんせハアヽ夫は合点がいかぬ今迄は一年に一度宗旨の改より外に判の入ぬ独尼殊にこなたも月別取にくる歩行殿とは違ふたマア何事じや聞さつしやれイヤされば爰らの事では有そもないが此嵯峨の庵室に数珠の実で過るは付たり表向には仏を見せかけ内證へ取入と小みめのよい髪長を出しかけて御所出尼出囲者大海小海と名を付一屏風を何ぼづゝと仏前の線香を立てくら商をするといの是といふも祇王祇女佛などゝいふ白拍子のしやの果が尼に成て此嵯峨に居る故に夫で所がみだらに成た迚人別の判形此庵にも其様なじだらくはござらぬかやヲヽあの云しやる事わいの仏様は見通しそんなじだらくな事何でせう聞もけがれるいんで下されハテいにます早う印判おこさつしやれと家内を見廻し立帰るお氣がつまろと主の尼枕屏風を押のけて今のをお聞なされたか覚もない事いふてきてそしてマアきみの悪い家内をひつた見廻してヲヽ是はしたり今のやつめにおまへのおざうりちよろり一足せしめられた
扨重盛様が今迄生キてござらふなら平家はよもや亡びはせじ孫子の為にもよからふにあなたがござらぬばつかりで此憂目を見るわいのと絵像に向ひ在がごとくくどき立〱かつばと伏て泣給ふ折節表テへくる足音ちやつと心得主ジの尼枕屏風を引廻しお姿隠す間もなく扉引明ケずつと這入コレ〱庄屋殿へ判もてごんせハアヽ夫は合点がいかぬ今迄は一チ年ンに一度宗旨の改より外に判の入ぬ独尼殊にこなたも月別取にくる歩行殿とは違ふたマア何事じや聞さつしやれイヤされば爰らの事では有そもないが此嵯峨の庵室に数珠の実で過ギるは付ケたり表テ向キには仏を見せかけ内證へ取入ルと小みめのよい髪長を出しかけて御所出尼出囲者大海小海と名を付ケ一ト屏風を何ンぼづゝと仏前の線香を立テてくら商をするといの是といふも祇王祇女佛ケなどゝいふ白拍子のしやの果が尼に成ツて此嵯峨に居る故に夫レで所がみだらに成ツた迚人ン別ツの判形此庵にも其様なじだらくはござらぬかやヲヽあの云しやる事わいの仏様は見通しそんなじだらくな事何ンでせう聞クもけがれるいんで下されハテいにます早う印ン判おこさつしやれと家内を見廻し立帰るお氣がつまろと主ジの尼枕屏風を押シのけて今のをお聞なされたか覚もない事いふてきてそしてマアきみの悪ルい家内をひつた見廻してヲヽ是はしたり今のやつめにおまへのおざうりちよろり一ツ足せしめられた
地色:平家は,中:平家は地色/中
ウ:亡びはウ
ウ:孫子のウ
ウ:あなたがウ
上:此上
ウ:絵像にウ
ウ:くどき立ウ
ウ:かつばとウ
スヱ:泣スヱ
中:給ふ中
地:折節,ウ:折節地/ウ
ハル:ちやつとハル
ウ:枕ウ
フシ:お姿フシ
ハル:扉ハル
色:ずつと色
詞:コレ詞
地:早う,ハル:早う地/ハル
フシ:家内をフシ
地:お氣が,中:お氣が地/中
ハル:押のけてハル
ウ:今のをウ
色:お聞なされたか色
色:なされたか色
詞:覚も詞