だかへくはん〱たる其風情ふぜいヤア〱義経うやまつて承はれ桓武くはんむ天皇雨乞あまごひの時より禁庭きんていとゞめ置音と名付たるつゞみ義経兼てのぞよし及ばれ此度の御恩賞おんしやうゐんぜんそへ給はるぞはいけん見せよと指出す義経はつと頭をさげ数ならぬ身に及びなき願雨乞にもちゆつゞみ軍の為にと存ずる所有がたし〱と箱押いたゝき〱相そへられし院宣とはいかなる勅命ちよくめいいで拝見はいけんと箱のふたひらけば内には鼓計ホヽウ院宣とて外になし其鼓すなはち院宣惣じて二つ有物を陰陽ゐんやうに取兄弟にかたどる鼓の裏皮うらかはおもて皮同じそだちぶくらにかけ合されしは是兄弟うらは義経表は頼朝なぞらへて其鼓を打と有が院宣也と聞もあへずハアヽ其つゞみが院宣ならば頼朝義経打やはらぎむつまじく禁庭きんていしゆいたせとのみことのり候やイヤそふでない〱君に忠勤ちうきんぬきんずる義経をとがと追かへせし頼朝は法皇へ敵たふ所存しよぞん兄頼朝を打とある追討ついたうの院宣と理を押まげて兄弟中同士どし打させて仕廻しまはたくみ義経はつと当惑とうわくさしうつむいて居給ひしがコハ日比ひごろに異なる法皇勅命ちょくめい仮令たとへ叡慮ゑいりよそむく共兄を討事存じもよらず頼朝にとがあらば義経も御刑罰けいばつつみせらるゝが弟の道所詮しょせん此初音の鼓申請ねば院宣も承はらずと指戻さしもどせば朝いよ〱したり顔綸言りんげんあせのごとし勅命ちょくめいそむけば義経朝敵なるが合点かと無理むり

色:其

詞:ヤア〱

地:義経,ハル:義経地/ハル

色:頭をさげ

色:さげ

詞:数ならぬ

地:有がたし,ハル:有がたし地/ハル

中:〱

ウ:相添られし

ハル:勅命ハル

ウ:いで

色:鼓計

詞:ホヽウ

地:院宣也,ハル:院宣也地/ハル

色:聞も

詞:ハアヽ

地色:理を,ウ:理を地色/ウ

ハル:同士ハル

ウ:義経

フシ:指うつむいてフシ

詞:コハ

地色:所詮,ウ:所詮地色/ウ

ハル:院宣もハル

ウ:朝方

色:したり顔

詞:綸言は

地:無理と,ハル:無理と地/ハル