殿殿殿
殿殿殿
讒者ざんしやわざにもせよ一たんの兄のめいひらかず腰越こしごへよりすご〱と帰りしは弟の義経さへあの通と世上の見ごらし理非りひわきまへぬ麁忽そこつ雑言ぞうごん尾籠びらう至極しごくいましめの詞ホヽウしんべう也義経軍の次第を奏問そうもんして御前よろしくはからはんとうはべはぬつぺり取とりさゝんと底工そこだくみ大内記引連て御殿間深まぶかに入にける小しとみのかげより左大将朝方の諸太夫しよだいふ主におとら人畜にんちく苗字めうじ猪熊いのくま大之しんコレ〱義経殿御油断ゆだんおさまつたとは云ながら平家の残党ざんとう小松の三位惟盛これもり簾中れんちう若葉の内侍ないし其儘に置ず共なぜ片付かたづけまはれぬホヽウ何事と存ぜしに女童おんなわらべの事よな何人有迚も天下のかひにならぬ事其儘で事はすむムウ事すむとはどふ成と成次第ならこつちも勝手身が主人朝方公若葉の内侍ないしに御執心しうしんと皆迄いはせず武蔵坊ヤアならぬ〱鎌倉殿のお指図さしづで縁組はともかくも平家方の女房を私に引入るは味方も同然どうぜんならぬ事と云ほぐせばヤアしやらくさいおけ〱いふ義経平大納言時忠のむこならずやいはいでもそれで知た若葉の内侍もチヱ〱くつたなヤアチヱ〱くつたとは我君をすゞめのやうにぬかしたりなコリヤこつちが鳥なおのれはいぶう〱ぬかさずすつこめと引つかんでちよいとほうる音はどつさりアイタヽヽヽヤレあら立るな武蔵坊しされ〱とせいする折から御座の間の御簾みす上左大将朝方あやしの箱引

地:尾籠,ハル:尾籠地/ハル

詞:ホヽウ

地:うはべは,ウ:うはべは地/ウ

ハル:寝とりハル

フシ:御殿フシ

地:小蔀の,ウ:小蔀の地/ウ

ハル:主にハル

色:大之進

詞:コレ〱

地:皆迄,ハル:皆迄地/ハル

色:武蔵坊

詞:ヤア

地色:ぶう〱,ウ:ぶう〱地色/ウ

ハル:引摑でハル

色:どつさり

ウ:ヤレ

ウ:しされ

フシ:せいするフシ

地:御簾巻,ウ:御簾巻地/ウ

ハル:あやしのハル