讒者の業にもせよ一旦の兄の命申開かず腰越よりすご〱と帰りしは弟の義経さへあの通と世上の見ごらし理非弁へぬ麁忽の雑言尾籠至極と誡の詞ホヽウ神妙也義経軍の次第を奏問して御前宜しく計はんとうはべはぬつぺり取持顔寝とりさゝんと底工大内記引連て御殿間深に入にける小蔀のかげより左大将朝方の諸太夫主に劣ぬ人畜の苗字も猪熊大之進コレ〱義経殿御油断〱治つたとは云ながら平家の残党小松の三位惟盛の簾中若葉の内侍其儘に置ず共なぜ片付て仕廻れぬホヽウ何事と存ぜしに女童の事よな何万人有迚も天下のかひにならぬ事其儘で事はすむムウ事済とはどふ成と成次第ならこつちも勝手身が主人朝方公若葉の内侍に御執心と皆迄云せず武蔵坊ヤアならぬ〱鎌倉殿のお指図で縁組はともかくも平家方の女房を私に引入るは味方も同然ならぬ事と云ほぐせばヤアしやらくさいおけ〱左いふ義経平大納言時忠の聟ならずやいはいでもそれで知た若葉の内侍もチヱ〱くつたなヤアチヱ〱くつたとは我君を雀のやうにぬかしたりなコリヤこつちが鳥なら己は蠅ぶう〱ぬかさずすつこめと引摑でちよいとほうる音はどつさりアイタヽヽヽヤレあら立るな武蔵坊しされ〱とせいする折から御座の間の御簾巻上左大将朝方あやしの箱引
讒者の業にもせよ一ツ旦の兄の命申シ開かず腰越よりすご〱と帰りしは弟の義経さへあの通リと世上の見ごらし理非弁へぬ麁忽の雑言尾籠至極と誡の詞ホヽウ神妙也義経軍の次第を奏問して御前ン宜しく計はんとうはべはぬつぺり取リ持チ顔寝とりさゝんと底工大内記引連レて御殿ン間深に入にける小蔀のかげより左大将朝方の諸太夫主に劣ぬ人畜の苗字も猪熊大之進コレ〱義経殿御油断〱治つたとは云ながら平家の残党小松の三位惟盛の簾中若葉の内侍其儘に置カず共なぜ片付て仕廻れぬホヽウ何事と存ぜしに女童の事よな何ン万ン人有ル迚も天下のかひにならぬ事其儘で事はすむムウ事済とはどふ成リと成リ次第ならこつちも勝手身が主人朝方公若葉の内侍に御執心と皆迄云せず武蔵坊ヤアならぬ〱鎌倉殿のお指図で縁組はともかくも平家方の女房を私に引入ルるは味方も同然ならぬ事と云ほぐせばヤアしやらくさいおけ〱左いふ義経平大納言時忠の聟ならずやいはいでもそれで知レた若葉の内侍もチヱ〱くつたなヤアチヱ〱くつたとは我君を雀のやうにぬかしたりなコリヤこつちが鳥なら己は蠅ぶう〱ぬかさずすつこめと引摑でちよいとほうる音トはどつさりアイタヽヽヽヤレあら立テるな武蔵坊しされ〱とせいする折から御座の間の御簾巻キ上左大将朝方あやしの箱引ン
地:尾籠,ハル:尾籠地/ハル
詞:ホヽウ詞
地:うはべは,ウ:うはべは地/ウ
ハル:寝とりハル
フシ:御殿フシ
地:小蔀の,ウ:小蔀の地/ウ
ハル:主にハル
色:大之進色
詞:コレ〱詞
地:皆迄,ハル:皆迄地/ハル
色:武蔵坊色
詞:ヤア詞
地色:ぶう〱,ウ:ぶう〱地色/ウ
ハル:引摑でハル
色:どつさり色
ウ:ヤレウ
ウ:しされウ
フシ:せいするフシ
地:御簾巻,ウ:御簾巻地/ウ
ハル:あやしのハル