便殿
がる佐藤次信さとうつぎのぶあばらに受馬より下にどうど落る其首取んと菊王丸船より磯辺いそべに上る所弟佐藤忠信がかへす矢先に敵味方互に不便びん武士ものゝふ討せし供養くやうと相引に其日の軍はさつとひく明れば敵より出す扇与一宗高むねたかて落す箕尾谷景清みおのやかげきよしころ引敵がかんずる味方がほむるされ共源氏は勝軍平家は軍兵ぐんびやう討なされ能登守教経のとのかみのりつね安藝あき太郎おなじく次郎二人を左右にひつぱさ海へかつぱと飛入たり是を冥途めいど門脇教盛かどわきのりもり経盛つねもりすけ盛有盛行盛なんど我も〱とつゞいて入新中納言知盛なごんとももりは御所の御船の御供とすゝんで海にざんぶと入天皇の御事はやはかと存ぜし油断ゆだんの間に二位の尼上あまじやう供し海へ入しと聞たる計かばねをももとめ得ず女院計助り給ふ生捕いけどつたるともがらは先て一したゝ叡覧ゑいらんそな奉れば申上るに及ばずと事こまやかのべらるゝ其弁舌べんぜつを其儘に日次ひなみにしるしとゞめける朝方にがつたる氣色けしきにて夫程のこう義経頼朝に対面たいめん叶はず腰越こしごへより追かへされた其とがをいへ聞んと聞より弁慶すゝみ出我君の御為には御兄なれ共蒲冠者範頼卿かばのくはんじやのりよりけうぬるいお生れ手柄てがらがなさに義経公にしなずを付あつちの手柄にせふ為に付したがねい人原じんばら讒言ざんけんと氣の付ぬは鎌倉殿のぶ詮義せんぎといはせも果ずヤアだまれ弁慶たとへ

地:弟,ハル:弟地/ハル

ウ:互に

ウ:供養と

中:相引に

ウフシ:軍はウフシ

ハルフシ:明ればハルフシ

中:敵より

ハル:出すハル

ウ:与一

中:落す

ウキン:箕尾谷ウキン

ハル:錣引ハル

ウ:敵が

ウ:味方が

ノル:され共ノル

色:勝軍

ウ:平家は

ハル:能登守ハル

色:教経

詞:安藝

地:是を,ウ:是を地/ウ

ハル:門脇ハル

ウ:同

ウ:資盛

ウ:行盛

ウ:〱

色:続て

詞:新中納言

地色:天皇の,ウ:天皇の地色/ウ

ウ:やはかと

ハル:油断のハル

ウ:二位の

色:御供し

詞:海へ

地:申上るに,ハル:申上るに地/ハル

ウ:其

フシ:日次にフシ

地色:朝方,ハル:朝方地色/ハル

色:氣色にて

詞:夫

地:聞より,ハル:聞より地/ハル

色:すゝみ

詞:我

地:氣の付ぬ,ウ:氣の付ぬ,色:氣の付ぬ地/ウ/色

ハル:ぶ詮義ハル

色:果ず

詞:ヤア