後白河の法皇政を執行はせ給ふ昵近の公卿は左大臣の左大将藤原の朝方君の御覚よき儘に己に諂ふ者には官位昇進申下し依怙贔屓の沙汰大方ならず群臣是をいかん共いはゞ叡慮に背んかと各舌をまき筆や大内記御日次に硯取添座列する滝口に案内して源氏の大将源九郎判官義経院参の其粧五位の雑袍善盡しはでを盡せし太刀飾供のかざりは三国一西塔の武蔵坊弁慶大紋の袖立烏帽子僧衣を憚る出立はげにもゆゝしく見へにける大内記取次にて源氏の武士参上と申上れば左大将いかに義経此度八嶋の合戦の様子法皇委しく聞し召ず天皇の入水一門の最期御日次に記れん申上よとある義経はつと承はりさん候今度の戦ひ平家は千騎計と見へ八嶋の磯に陣を張義経が勢は四百余騎只事にては勝事なしと不時に寄たる鬨にあはてふためき平家の勢船に取乗沖中へ天皇を具し奉る其時城に火を放ち明りに眼さませしやらん能登守教経小船に乗移り希代の弓力引詰差詰射たる矢先は義経が馬の先に立ふさ
後白河の法皇政を執行はせ給ふ昵近の公卿は左大臣の左大将藤原の朝方君の御覚よき儘に己に諂ふ者には官位昇進申シ下し依怙贔屓の沙汰大方ならず群臣是をいかん共いはゞ叡慮に背んかと各舌をまき筆や大内記御日次に硯取リ添座列する滝口に案内して源氏の大将源九郎判官義経院参の其粧五位の雑袍善盡しはでを盡せし太刀飾供のかざりは三国一チ西塔の武蔵坊弁慶大紋の袖立テ烏帽子僧衣を憚る出立チはげにもゆゝしく見へにける大内記取次キにて源氏の武士参上と申上れば左大将いかに義経此度八嶋の合戦の様子法皇委しく聞し召ず天皇の入水一門の最期御日次に記れん申上よとある義経はつと承はりさん候今度の戦ひ平家は千騎計と見へ八嶋の磯に陣を張義経が勢は四百余騎只事にては勝事なしと不時に寄たる鬨にあはてふためき平家の勢船に取乗沖中へ天皇を具し奉る其時城に火を放ち明りに眼さませしやらん能登守教経小船に乗移り希代の弓力引詰差詰射たる矢先は義経が馬の先に立ふさ
ウ:後白河のウ
ハル:行はせハル
ウ:昵近のウ
中:朝方中
ウ:君のウ
ハル:官位ハル
ウ:依怙贔屓のウ
ウ:群臣ウ
フシ:各フシ
地色:大内記,ウ:大内記地色/ウ
ハル:滝口にハル
ウ:源九郎ウ
ウ:五位のウ
ウ:供のウ
色:弁慶色
ウ:大紋のウ
ハル:出立はハル
フシ:げにもフシ
地:大内記,ウ:大内記地/ウ
ハル:源氏のハル
ウ:申上ればウ
色:義経色
詞:此度詞
地:あはて,ウ:あはて地/ウ
ウ:船にウ
ウ:天皇をウ
フシ:具しフシ
中:其,ウ:其,コハリ:其中/ウ/コハリ
ウ:火をウ
ウキン:明りにウキン
ハル:さませしハル
ウ:能登守ウ
中:乗中
キン:希代のキン
ウ:引ウ
ハル:射たるハル
色:義経が色
詞:馬の詞