公募研究1「坪内逍遙、坪内士行の基礎的調査研究」
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研究代表者 濱口久仁子(立教大学異文化コミュニケーション部兼任講師)
研究分担者 菊池明(演劇博物館招聘研究員)
松山薫(早稲田大学専任職員)
柳澤和子(早稲田大学教育総合科学学術院非常勤講師)
水田佳穂(演劇博物館招聘研究員)
小島智章(武蔵野大学非常勤講師)
○研究成果概要(平成27年度)
□坪内逍遙資料(坪内逍遙宛書簡)
今年度も未整理書簡の整理及び仮目録作成作業を進め、外国人を除く約400名分の逍遙宛書簡の仮目録を作成し、そのうち52名433通のデジタル撮影を行った(1月6日現在)。また書簡の翻刻は、逍遙宛會津八一書簡128通の年代考証と翻刻を完了した。逍遙と八一の往復書簡は既に「坪内逍遙・會津八一往復書簡」(1968)として刊行されているが、今回の翻刻はすべて新出書簡である。八一の書簡は長文が多く、逍遙に率直に真情を吐露しており、今まで不明であった部分を補うことができる貴重な資料である。逍遙・八一の和歌や俳句も記載され、美しい絵入りのはがきも多く含まれている。今年度は前半80通を「演劇研究」39号に掲載(菊池・松山・柳澤・濱口「〈坪内逍遙宛諸家書簡1〉坪内逍遙宛會津八一書簡(1)」)する(後半は次年度の予定)。
□坪内士行資料
20箱のうち5箱を開封し、3箱分を整理した。写真約1千点と、書簡約1千8百通がこれに当たる。ともに仮目録を作成し、写真はデジタル化を済ませた。これまで資料の存在が知られていなかった為に顧みられることの少なかった、関西在住の早稲田の卒業生に支えられて主宰した戯曲研究会、芸術協会、小林一三に任されて責任者を務めた宝塚国民座といった、大正昭和初期の士行の新劇活動が明らかになり、また彼を守り立てんとする周囲の様子を窺うことができる。たとえば、大正8年に一三が企てた男子養成すなわち宝塚新劇団とは、士行にとってまぼろしの宝塚文芸協会であったといえよう。これについては平成27年度歌舞伎学会秋季大会二日目(12月13日於学士会館)にて研究発表(水田「坪内士行と宝塚男子選科」)を行った。