公募研究4「千田是也と同時代演劇―千田資料に関する調査・研究」
-
研究代表者 阿部由香子(共立女子大学文芸学部准教授)
研究分担者 秋葉裕一(早稲田大学創造理工学部教授)
寺田詩麻(白百合女子大学国語国文学科非常勤講師)
宮本啓子(白百合女子大学国語国文学科非常勤講師)
○研究成果概要(平成26年度)
まず、当初の計画では千田資料のうち最も古い1920年代~30年代の写真のデジタル化と考証を進める予定であったが、研究期間、予算、資料劣化の状況などを考慮し、伊藤道郎関連の「J資料」を取り上げることに変更した。その上でまず「J資料」のうち伊藤道郎関連の写真アルバムJ1-01~20、J2-01~03、J5、H31の計25冊の撮影と目録作成を進めた。撮影とデジタル化は委託し、仮目録のデータ入力は研究分担者が行った。
目録作成に際しては写真の裏書、アルバムのキャプションなどの文字データも入力し、現在検証を進めている段階である。内容は伊藤道郎のプライベートな写真、ヨーロッパ、アメリカ、日本における国際的な活動の記録写真、具体的な代表作の舞台写真など多岐にわたる。画像データベース化することで様々な研究領域における基礎資料となり得ると考える。
また、並行して「J資料」の中でも伊藤道郎が1945年~1950年前後に深くかかわった「アーニー・パイル劇場」についての資料に着目し、その整理を進めた。現時点では、内容の大まかな確認にとどまっているが、劇場の内部資料や上演資料、また作品制作のメモ、台本の類が含まれおり、これまで明らかではなかった「アーニー・パイル劇場」の様相が少しずつ判明してきている。占領期の劇場がどのように運営されていたかという内部機構や興行システムについて、また、伊藤道郎が作り出したレビューやオペラ作品の内容について、そして、占領期の日本の演劇をとりまく様々な状況についてなど、今後検討していきたい問題が見出されたところである。