公募研究3「プロジェクション・メディアの考古学:幻燈資料の整理・公開とデジタルデータを活用した展示・創作」

    研究代表者 大久保遼(東京藝術大学社会連携センター教育研究助手)
    研究分担者 草原真知子(早稲田大学文化構想学部教授)
          向後恵里子(明星大学人文学部准教授)
          上田学(日本学術振興会特別研究員PD)
          遠藤みゆき(早稲田大学文学研究科博士課程)
          齋藤達也(株式会社アバクス代表取締役)
          加藤公太(東京藝術大学アートイノベーションセンター教育研究助手)
          桒原寿行(東京藝術大学社会連携センター教育研究助手)

 ○研究成果概要(平成26年度)
 演劇博物館に所蔵されている写し絵、幻燈資料の閲覧を行い、まずは資料体の概要と保存状態を把握することからはじめた。また共同研究チームで草原真知子氏所蔵の幻燈コレクション、販売目録等の関連資料を閲覧し、演劇博物館所蔵のスライドと販売目録を照合することで、年代や題材の特定が進むとの見通しを得た。また投影装置の修復や復原を行っていく必要があることも明らかになり、今年度は劇団みんわ座と協力して、写し絵の投影装置と、演劇博物館所蔵の写し絵種板(「小栗判官一代記」)の一部を、デジタルデータをもとに復元を行った。今回の作業をもとに、今後本格的な投影装置と種板の復元を行い、デジタルデータに基づいた写し絵の復元上映会を行う予定である。

【館蔵スライドカタログ】
 館蔵スライドのなかから、350点ほどを厳選し、「写し絵」「幻燈(教育)」「幻燈(娯楽)」「マジック・ランタン」に分類し、構成を行った。現在、画像の選定とレイアウト、共同研究チームと外部の有識者による解説の執筆がほぼ完了し、最終的な校正段階である。今年度の共同研究の大きな成果の一つである館蔵スライドカタログ(演劇博物館編『幻燈スライドの博物誌――プロジェクション・メディアの考古学』)は3月中に青弓社より刊行予定

【幻燈データベース】
 資料調査やスライドカタログを編集する過程で得られたデータを、演劇博物館幻燈データベース(URL: http://www.enpaku.waseda.ac.jp/db/epkgentou/)に追加する作業を現在行っている。今年度中に確定した情報を追加した上で、データベースの更新を行い、館蔵スライドの全画像データを公開する予定である。今後、写し絵の画像データや販売目録のデータを統合していくことを検討している。

【企画展示】

 資料調査と館蔵資料のデジタル化等の成果を踏まえた企画展示が4月1日より演劇博物館で予定されている。今年度は展示に向けて、出品資料の選定、展示解説の作成を行った。またデザインチームによってメインビジュアルと特設webの作成が行われた。展示レイアウトの基本方針もほぼ固まり、東京藝大、IAMAS、SFC、UCLA出身のディレクター、作家の協力を得て、幻燈のプロジェクターの機構やスライドのデジタルデータを使用した作品制作も進められている。