公募研究1「坪内逍遙、坪内士行の基礎的調査研究」
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研究代表者 濱口久仁子(立教大学異文化コミュニケーション部兼任講師)
研究分担者 菊池明(早稲田大学演劇博物館招聘研究員)
松山薫(早稲田大学専任職員)
柳澤和子(早稲田大学教育総合科学学術院非常勤講師)
小島智章(武蔵野大学非常勤講師)
○研究成果概要(平成26年度)
本年度は、坪内逍遙・坪内士行資料の整理作業を進め、資料のデジタルデータ化、目録化に着手した。
坪内逍遙資料については、逍遙宛て書簡を整理しながら目録を作成するとともに、『坪内逍遙書簡集』(平成25年、早稲田大学出版部)に収録される人物からの書簡を中心として、84名分、計847通(葉書215通、封書632通)の撮影(デジタルデータ化)を行なった。また、未撮影資料についても順次作業を進めており、来年度中には全点の整理・目録化を完成させることを目標としている。今回整理したもののなかには、これまで未紹介の吉江喬松や小泉八雲からの書簡などが見つかっており、今後も貴重な資料の発見が期待される。
坪内士行資料については、中央図書館地下収蔵庫に保管されている段ボール20箱を開封して内容を確認したうえで、特に重要と思われる原稿、書簡、日録、舞台写真、上演関係資料などが含まれる5箱分を演劇博物館へ移管し、整理作業を開始した。これら未整理資料のなかには、大正期の「芸術協会」、「宝塚国民座」関係資料など、他に所蔵を聞かない貴重な資料が多数含まれており、今後の士行研究、近代演劇研究に大いに資するものと思われる。今年度は特に希少な上演関係資料(番組、チラシなど)44点の撮影を行なった。また現在、舞台写真、スナップ写真などの整理作業を進め、演劇博物館に撮影を依頼するための目録化作業を進めている。
逍遙宛て書簡、士行資料ともに保存状態が良くないため、一点一点紙を伸ばしながら中性紙封筒に納める作業が必要となり、状態の悪いものは演劇博物館へ補修を依頼している。また、逍遙・士行資料ともに厖大な量に及ぶため、未だ全容を把握しきれていないが、引き続き整理・目録化作業を進めながら、重要資料の発掘、資料内容の調査研究に努めたい。
今年度の個別の研究成果としては以下2件の発表を行なった。水田佳穂「坪内士行と戯曲研究会」は、今回新たに発見された士行資料に基づき、これまで不明な点の多かった大正期の「戯曲研究会」、「芸術協会」時代の士行の活動の実態を具体的に明らかにした。濱口久仁子「坪内士行宛書簡」は、財団法人逍遙協会から演劇博物館へ移管された士行関係資料のうち、士行宛ての書簡を翻刻紹介したもので、海外在住者を含めた士行の幅広い交友関係の一端が明らかとなった。