テーマ研究5「日本映画、その史的社会的諸相の研究」

    研究代表者 岩本憲児(日本大学芸術学部大学院映像芸術専攻教授)
    研究分担者 アンニ(明治学院大学言語文化研究所研究員)
          田島良一(日本大学芸術学部教授)
          古賀太(日本大学芸術学部教授)
          蔡宜静(台湾康寧大学助理教授)
          志村三代子(早稲田大学演劇博物館招聘研究員)
          土田環(日本映画大学准教授)
          中山信子(早稲田大学ジェンダー研究所客員研究員)
          渡邉大輔(日本大学芸術学部非常勤講師)

 ○研究成果概要(平成25年度)
 2013年度の研究会では、分担メンバーはもとより、これまでに比較して、海外を含めた外部からの講師を多数招聘して、より多角的な研究会活動を行った。時代は1960年代以降から現代までを対象とし、第1回研究報告会は非公開で主に年間方針の打ち合わせを行った。
第2回研究報告会の全体テーマ「ドナルド・リチー再考:日本映画への貢献をめぐって」では、13年2月に亡くなったドナルド・リチー(1924~2013)の日本映画に果たした功績をめぐり、4名の外部講師を招き、研究報告を行った。1名は、現在製作中のリチーを追ったドキュメンタリー映画の抜粋を上映し、その活動を紹介した。1名は、リチーがとりわけ注目した黒澤明をめぐる議論を再検討した。1名は、英文によるほぼ最初の本格的な日本映画紹介書となったリチーの共著『The Japanese Film』(59年)の孕んでいる多面的な可能性について報告した。1名は、ニューヨークの非営利組織ジャパン・ソサエティでの活動経験に即して、リチーが日本映画紹介に果たした貢献について論じた。


第3回の全体テーマ「海外における日本映画の受容と影響:1960年代から現在まで」では、ドイツ、香港、フランス、イタリアからそれぞれ第一線で活躍する研究者を招き、60年代以降、現在までの日本映画の受容と影響について研究報告を行った。1名は、現代ドイツの映画アカデミズムにおける日本映画研究の現状について報告。1名は、映画配給など主に産業史の観点から日本映画と香港映画界の交流史について報告した。1名は、60年代以降のフランスにおける日本映画の4人の重要な紹介者(アンリ・ラングロワ、マックス・テシエ、ジャン=ピエール・ジャクソン、クリストフ・ガンス)の役割について紹介した。1名は、イタリアにおける日本映画の受容を商業的な側面と文化政治学的な側面の両方から検討した。

第4回の全体テーマ「日本映画、その史的社会的諸相の研究――総括/報告と討議」では、それぞれ外部の招聘講師と分担研究者から1名ずつ、発表がなされた。外部講師からは草創期の東映動画が行った海外進出計画を産業史的観点から調査報告した。分担研究者からは、永田雅一の大映における国際進出戦略について報告された。その後、それぞれの分担研究者から3年間の研究成果についての報告がなされ、研究総括としての今後の全体論集の刊行に向けた討議が行われた。