公募研究9「昭和期日本における幻灯(スライド)の復興と再発展―「教育」と「運動」のメディアとしての製作・流通・運用に関する実証的研究を中心に― 」
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研究代表者 鷲谷花(早稲田大学文学学術院非常勤講師)
研究分担者 鳥羽耕史(早稲田大学文学学術院教授)
岡田秀則(東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員)
紙屋牧子(武蔵野美術大学非常勤講師)
坂尻昌平(日本大学芸術学部非常勤講師)
田中範子(神戸映画資料館支配人)
谷合佳代子(大阪産業労働資料館館長)
土居安子(財団法人大阪国際児童文学館主任専門員)
安井喜雄(神戸映画資料館館長)
吉原ゆかり(筑波大学人文社会科学研究科准教授)
李正旭(高麗大学・文科大学日本文学非常勤講師)
Robert Tierney(イリノイ大学東アジア研究科教授)
○研究成果概要(平成25年度)
前年度に大阪国際児童文学振興会より寄贈を受けた幻灯1500点のうち、説明台本の欠けていた奥田商会製作の幻灯については、奥田商会現社長の奥田美徳氏のご厚意により、ほぼ全ての説明台本をご寄贈いただいた。奥田商会製作の幻灯のうちには、昭和初期にアニメーターとして活躍した木村白山が作画を担当したフィルムが複数含まれており、白山の戦後の消息は不明のため、アニメーション史的にも貴重な資料と考えられる。
前年度に熊本学院大学・水俣学研究センターによる所蔵を確認した、東大セツルメント川崎こども会製作の幻灯『自転車にのってったお父ちゃん』を、所蔵元の水俣学研究センター及び原著作者の加古里子氏の許諾を得て、複製・ニュープリント化し、「夏の夜の幻灯会2013」及び「幻灯の映す家族」にて上映した。また、東大セツルメント川崎こども会における幻灯創作・上映活動について、加古里子氏に書面によるインタヴュー調査にご協力いただいた。
2013年8月18日にエル・おおさかにて「夏の夜の幻灯会2013」を開催、戦後社会運動・労働運動に関連する4作品を上映した。また、2013年10月12日に、山形国際ドキュメンタリー映画祭2013《やまがたと映画》の公式プログラムとして、「幻灯の映す家族」と題する上映プログラムを山形美術館にて上映、『自転車にのってったお父ちゃん』及び山形の農家をモデルとする『嫁の座』のニュープリント版を含む5作品を上映した。
2013年9月12~14日に、福島県・山形県におけるリサーチを実施、福島大学松川資料室にて、松川事件支援運動に関連して作られた一連の幻灯のフィルム及び台本の調査を行い、また、敗戦直後から幻灯上映活動のボランティアを続けてこられた川本年邦氏への聞き取り調査を実施、同氏より占領期に制作された幻灯『シュンポシオン島』のフィルム及び台本の寄贈を得た。山形県では『嫁の座』に出演された阿部ご一家に、出演・製作事情についての聞き取り調査を行った。
神戸映画資料館に所蔵されている主に1950年代の労働運動・社会運動に関連する幻灯フィルム及び台本の整理・目録化作業をほぼ完了した。
2014年2月8日に韓国・中央大学校にて開催された韓国日本学会第88回学術大会に鷲谷花・紙屋牧子が参加し、研究成果の一部を口頭発表した。また、2014年3月31日刊行予定の『ICONICS』11号に、鷲谷花による論文「The Revival of “Gentou” (magic lantern, filmstrips, slides) in Showa period Japan: Focusing on Its Developments in the Media of Post-war Social Movements」の掲載が決定している。