公募研究4「『ポルティチの唖娘』の復元をめぐるブルーバード映画の多角的研究」
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研究代表者 小川佐和子(京都大学人文科学研究所人文学研究部助教)
研究分担者 小松弘(早稲田大学文学学術院教授)
川島京子(早稲田大学文学学術院助教)
シェリー・スタンプ(カリフォルニア大学映画・デジタルメディア学科教授)
森佳子(日本大学非常勤講師)
○研究成果概要(平成25年度)
・『ポルチシの唖娘』をはじめとするロイス・ウェバー監督作品の特集上映会実施
東京国立近代美術館フィルムセンターにおいて、無声映画に音楽伴奏などを付けて上映する毎年の恒例企画「シネマの冒険 闇と音楽」にて、『ポルチシの唖娘』をはじめとするロイス・ウェバー監督作品のレトロスペクティブを実施することができた。D・W・グリフィスと並ぶアメリカ映画初期における先駆的な女性映画監督であるロイス・ウェバーは、近年、世界的に再評価の機運が高まっており、2012年に国際的な映画復元映画祭であるボローニャ映画祭にて初めて本格的な回顧上映がされたが、今回の特集はそれに基づき、日本において本格的なウェバーを紹介する初めての機会となった。6日間で、ロイス・ウェバーの1910-20年代の作品計11本(6プログラム)を連携拠点の予算およびフィルムセンターの協力で上映した。本研究課題の参考資料として作成した字幕、および研究協力者のジョン・スウィーニー氏による『ポルチシの唖娘』のオペラ音楽と映画の場面がどのように対応しているかといった調査結果に基づく音楽伴奏の実施(伴奏は柳下美恵氏であり、今回のパフォーマンスのためにスウィーニー氏からご協力頂いた)、ブルーバード映画の金字塔である『毒流』の弁士上映など、期待していた以上の上映会としての成果を上げることが可能となった。また、今回の上映の実現に当たっては、イギリスのブリティッシュ・フィルム・インスティトゥート、アメリカの議会図書館、イタリアのボローニャ映画祭と、国際的な協力関係も深めることができた。
・公開研究ワークショップの実施
上記フィルムセンターでの上映会に加え、早稲田大学において公開研究ワークショップ(「『ポルチシの唖娘』と初期ハリウッドの女性監督ロイス・ウェバー」)を実施し、各分野の専門家による報告と、フィルムセンターでは上映されなかった分担者の小松弘氏所蔵の16ミリフィルムの参考上映を行った。ワークショップでは、ロイス・ウェバーを長年研究されてきたカリフォルニア大学のシェリー・スタンプ氏に講演をして頂いた。スタンプ氏の日本出張に合わせて、東京首都大学との共催のもと、別の議題(「『暗中鬼』:初期ハリウッドにおける避妊、映画、検閲」)でロイス・ウェバーの講演も実施された。『ポルチシの唖娘』をめぐって、他分野からの多様なアプローチの端緒を開くことができた。