テーマ研究「日本映画、その史的社会的諸相の研究」2013年度第2回研究報告会「ドナルド・リチー再考:日本映画への貢献をめぐって」
演劇映像学連携研究拠点テーマ研究「日本映画、その史的社会的諸相の研究」(研究代表者:古賀太)が主催する研究報告会「ドナルド・リチー再考:日本映画への貢献をめぐって」が7月27日に開催されます。
「ドナルド・リチー再考:日本映画への貢献をめぐって」
◆日時 : 7月27日(土)13:20-18:20 (開場 12:50)
◆会場 : 早稲田大学キャンパス 26号館(大隈記念タワー)302教室
今年亡くなられたドナルド・リチーDonald Richie氏(1924-2013)の功績をめぐり、研究会外部から5名の講師をお招きしました。当研究会では、同氏の日本映画に対する貢献と、その意義を再考いたします。関心のある方は、どうぞふるってご参加ください。
◆概要
13:20- 開会あいさつ 古賀太
13:30-14:30
1.映画上映と解説
「ドキュメンタリー映画『ドナルド・リチーと日本:アウトサイド・イン』の取材を通じて」
森晃一(日本外国特派員協会 映画コーディネーター/映画プロデューサー)
2000年代、ドナルド・リチー氏との親密な交流から、晩年までのリチーの活動の調査、記録を行い、また、日米欧で、リチーとその知人たちへのインタビューを実施し、記録している森晃一とK.セバンズ共同の貴重な資料映像の一部をシンポジウム用に特別に抜粋し紹介する。
参考『ドナルド・リチーと日本:アウトサイド・イン』(監督:Karen Severnsキャレン・セバンズ、制作:森晃一、Karen Severns)のHP
http://www.kismetjapan.com/jp_outin.html
14:40-15:40
2.「ドナルド・リチーの黒澤明論を再検討する」
マートライ・ティタニラ MATRAI Titanilla (早稲田大学演劇博物館招聘研究員)
ドナルド・リチーが初めて来日したのは終戦の直後だった。「つまらない故郷を出る」ために来日したリチーは、以後60年にわたって日本で過ごすことになり、日本文化、とりわけ日本映画を世界に紹介することに大きく貢献した。しばしば外国人が日本映画について知識を得ることができるのはリチーのおかげだと言われるが、たしかに、来日した直後から映画批評を始め、映画に関する多数の論文、エッセー、書籍を発表した。そして、リチーがとりわけ注目したのが、黒澤明の映画であった。
今回の発表では、リチーと黒澤明との議論について考察する。具体的には、黒澤とリチーの人間的な関係から、リチーの黒澤に対する学問的な解釈まで様々な面に注目したい。リチーは『黒澤明の映画』以外にも黒澤に関する文献を数多く執筆しているため、それらの内容から、リチーの黒澤論がどのように変遷したかが分かる。リチーの著作を参照するとともに、リチーの黒澤論に対する他の論者の批評も利用しながら、リチーの黒澤論を再検討したい。
15:50-16:50
3.「産業対芸術 : 『The Japanese Film』の複雑な可能性」
アーロン・ジェロー Aaron GEROW (イエール大学教授)
ドナルド・リチーとジョセフ・アンダーソンの共著、英語による日本映画史『The Japanese Film』が初めて出版されたのは、1959年であったが、いまだ絶版に至っていない名著となっている。現在におけるその意味を考えてみたい。同書には、 冷戦の世界観の下で、戦後アメリカが追究した日本のモダニゼーション論が色濃く醸し出されていると同時に、一種のオリエンタリズムも垣間見え、時代性を強く感じさせる側面もある。その一方、作家論・作品論の記述と裏腹に、今でも類のない産業史の記録が内包されている。おそらくこれらの矛盾にこそ、『The Japanese Film』の魅力と可能性が潜んでいる。
17:00-18:00
4.「Japan Society における日本映画とドナルド・リチーの貢献」
平野共余子 (映画史研究家)
講師は1980年代半ばから2000年代半ばまで、ニューヨークの非営利団体ジャパン・ソサエテイーで映画上映を担当した。ジャパン・ソサエテイーは日米交流のために日本文化紹介を活動目的とする組織であり、現在も活動は続いている。ここでの経験に基づき、北米で受容された日本映画の変容とドナルド・リチー氏の貢献について考察する。
◆お問い合わせ先
演劇映像学連携研究拠点事務局
Tel: 03-5286-8515 Fax: 03-5286-8516
Mail kyodo-enpaku_atmark_list.waseda.jp
(_atmark_は@にかえて送信してください。)