公募研究「佐野碩と世界演劇」シンポジウム
「佐野碩、演劇で世界に勝負を挑む!~日本からロシア・欧州へ、そして北米・南米へ~」
演劇映像学連携研究拠点公募研究「佐野碩と世界演劇」(研究代表者:上田洋子)が主催するシンポジウムが、下記の通り開催されます。どなたでも自由に参加できます。
◆日時 : 3月2日(土)13:30-18:30
3月3日(日) 13:00-18:50
◆会場 : 早稲田キャンパス 8号館 B101教室
◆概要
佐野碩(1905-1966)は村山知義らとともに1920年代後半の日本左翼演劇をリードし、新劇の基盤を固めた、日本演劇史上極めて重要な演出家です。1931年に政治上の理由で出国した後、1932年に訪ソ。1937年の国外追放までモスクワに滞在し、国際左翼演劇組織の幹部を務める傍ら、メイエルホリド劇場の演出助手として働きました。その後はメキシコで近代演劇の発展に尽くしました。国際的演劇人としても先駆的な佐野碩の活動を、各国の研究者が日本初公開の映像を交えながら明らかにします。
3月2日(土)「日本からロシアへ、左翼演劇の可能性を求めて」
(司会:上田洋子・星野高)
13:30 挨拶
13:40-14:40
加藤哲郎(一橋大学名誉教授・早稲田大学客員教授、政治学)
「1930年代の世界と佐野碩」
休憩15分
14:55-15:45
萩原健(明治大学准教授、ドイツ演劇)
「ピスカートアと佐野碩」
15:45-16:35
伊藤愉(一橋大学博士課程、ロシア演劇)
「ロシアの佐野碩――メイエルホリド劇場での活動」
休憩15分
16:50-18:00
ナターリヤ・マケーロワ(ロシア国立バフルーシン中央演劇博物館
メイエルホリドの家博物館館長)
「佐野碩とメイエルホリド劇場、あるいは師との5年間」
(ロシア語、通訳有)
18:00-18:30
コメント 桑野隆(早稲田大学教授)・
質疑応答
3月3日(日)「メキシコの佐野碩」(司会:星野高)
13:00 挨拶
13:10-14:10
田中道子(コレヒオ・デ・メヒコ教授、日本史)
「佐野碩の演劇」
休憩10分
14:20-15:20
スサナ・ウエイン(演出家)
「佐野碩の演劇創作とその過程」(スペイン語、通訳有)
※ドキュメンタリー映像『るつぼ 演出家佐野碩の創造過程』
(エウヘニオ・コボ監督、2000)上映あり
休憩15分
15:35-16:15
ホビータ・ミアン(メキシコ国立芸術センター ロドルフォ・ウシ
グリ演劇研究所所員)
「アメリカ演劇と佐野碩」
16:15-16:55
ギエルミーナ・フエンテス(メキシコ国立芸術センター ロドルフ
ォ・ウシグリ演劇研究所所員)
「劇評に見る佐野碩の演劇」
休憩10分
17:05ー18:00
ドキュメンタリー映像『「ラ・コロネラ」(1940) メキシコ現代
舞踏の出発』(エウヘニオ・コボ監督、2001)上映(日本語字幕有)
18:00ー18:40
コメント・質疑応答・シンポジウム総括
(藤田・菅・吉川・田中・伊藤・マケーロワ)
18:40ー18:50 閉会挨拶
◆講演概要
加藤哲郎「1930年代の世界と佐野碩」
佐野碩(1905-66)は、関東大震災後の東京で演劇活動を始め、左翼運動で検挙され日本を離れる。ドイツ経由でソ連へ渡り、メイエルホリドのもとで演劇を学んだが、スターリン粛清で国外追放され、メキシコに渡って最終的に「メキシコ演劇の父」になる。1931年出国後一度も日本へ戻らなかった「亡命者」としての佐野碩の生涯を、(1)震災後の日本社会主義と労働者演劇に飛び込み、(2)世界大恐慌からドイツ・ナチス政権成立の過程を目撃し、(3)「労働者の祖国」ソ連への入国を果たしたが、日本人であるが故に国外 追放となったスターリン粛清犠牲者としての佐野碩、の3点にスポットをあてて、激動の時代と流浪の旅を追う。(1)では後藤新平を祖父に共産党指導者 佐野学を叔父にもつ「良家の子弟」佐野碩の思想形成に注目する。(2)について加藤『ワイマール期ベルリンの日本人』 岩波書店、2008年、(3)について加藤『国境を越えるユートピア』平凡社ライブラリー、2002年、参照。
萩原健「ピスカートアと佐野碩」
佐野碩は1930年代、ソヴィエト・ロシアで国際革命演劇同盟(IRTB/MORT)のメンバーとして活動したが、当時その代表だったのが、ドイツの演出家、エルヴィーン・ピスカートア(1893-1966)である。彼はヴァイマル共和国期のドイツで活動しながらロシアで映画を制作していたが、ヒトラーの政権掌握を受け、そのまま亡命、以後は上記同盟代表としての仕事と並行して、同様の境遇下にあったドイツの亡命演劇人を束ねる試みを展開していた。このピスカートア、および他の亡命ドイツ演劇人と、佐野はロシアでどの程度接触し、またその後、どのような展開があったのだろうか。この問いを本発表では明らかにしたい。
伊藤愉「ロシアの佐野碩―メイエルホリド劇場での活動」
佐野碩がメイエルホリド劇場で働いていたことは、比較的良く知られているが、その実際はそれほど明らかにはなっていない。ロシア国立文学芸術古文書館の資料を元に、佐野碩がどのようにメイエルホリド劇場で働いていたか、佐野碩の仕事の具体的な内容に触れつつ考察する。
ナターリヤ・マケーロワ「佐野碩とメイエルホリド劇場、あるいは師との5年間」
佐野碩がメイエルホリド劇場に所属していたのは1932年から1937年である。これは国立メイエルホリド劇場が存在した最後の時期にあたり、一方でメイエルホリドの演出技術の円熟と舞台上の表現力の新しい手段の探求、佐野碩自身も師(マスチェル)の他の助手・研究員たちとともに学び、働いた劇場付属の科学研究所(NIL)の活発な活動に彩られている。他方で、スターリン全体主義体制の強化、あらゆる芸術ジャンルにおける厳しい検閲、唯一正しい方法としての「社会主義リアリズム」のイデオロギー強制というソ連の政治状況があり、メイエルホリドが使用できるような同時代の戯曲の欠如をもたらし、古典への取り組みは党機関の指導者たちの非難を呼ぶことになった。その後の佐野の創作活動に影響を与えることになったメイエルホリド劇場における活動について考察したい。
◆お問い合わせ先
演劇映像学連携研究拠点事務局
Tel: 03-5286-8515 Fax: 03-5286-8516
Mail kyodo-enpaku_atmark_list.waseda.jp
(_atmark_は@にかえて送信してください)
※なお、上記2日間の開催に先立ち、3月1日(金)にも18時よりシンポジウムと映像上映を行います。こちらは拠点主催ではありませんが、合わせてご参加ください。
◆日時 : 3月1日(金)18:00-20:30
◆会場:早稲田大学小野記念講堂
◆概要
「佐野碩再考」(司会:星野高)
18:00 開会の辞
竹本幹夫(早稲田大学演劇博物館館長)
18:10-19:00
映像「世界わが心の旅 メキシコ亡命者の栄光を見つめて」
(斉藤憐、1998年放送)
休憩10分
19:10-20:30
座談会「佐野碩と現代」(質疑応答あり)
パネリスト
・藤田富士男(『ビバ!エル・テアトロ!』著者、近代日本演劇)
・菅孝行(『自由人佐野碩の生涯』協力者、演劇批評家)
・田中道子(コレヒオ・デ・メヒコ教授、日本史)
・吉川恵美子(上智大学教授、スペイン・ラテンアメリカ演劇史)
司会
・上田洋子(早稲田大学演劇博物館招聘研究員、ロシア演劇)
・星野高(早稲田大学演劇博物館助手、近代日本演劇)