テーマ研究「日本映画、その史的社会的諸相の研究」
2012年度 第4回研究報告会 「戦後日本映画の海外進出をめぐって」

演劇映像学連携研究拠点テーマ研究「日本映画、その史的社会的諸相の研究」(研究代表者:岩本憲児)が主催する公開研究会が、下記の通り開催されます。どなたでも自由に参加できます。

◆日時 : 1月19日(土)13:15-18:00 (12:45開場)
◆会場 : 早稲田キャンパス 26号館(大隈記念タワー)302会議室

◆概要
13:15 -13:55 中山信子(早稲田大学ジェンダー研究所)
1950年代フランスにおける日本映画の受容と京マチ子の評価」
 1952年の『羅生門』の公開以降、フランスで日本映画に対する関心が批評家や一部の観客の間で高まり、1950年代を通じて36本の日本映画が公開された。その内訳を見ると、映画祭での受賞作品を初め、独立プロ作品やSF映画など多岐にわっている。本発表では当時のフランスの映画を取り巻く環境、観客の動向などを参照しながら、日本映画がどのように受容されたかを検証する。
 また公開された36本の日本映画のうち、8本が京マチ子主演作品であった。この時期、フランスで最も著名な日本人女優であった京マチ子に対する評価をメディアの反応から探る。

14:00 -14:40 田島良一(日本大学芸術学部)
「永田雅一の日本映画国際化戦略」
 日本の映画産業は少子高齢化による市場規模の縮小から、今後は海外への進出が重要課題となるが、永田雅一は戦後逸早く日本映画の輸出がビジネスになる見込みがあると考え、日本映画の輸出振興を図った人物だった。だが、この永田の功績も大映が倒産したために、もっぱら永田の社長としての経営能力が問われる中で忘れられてしまった感がある。今回の発表では、永田の映画プロデューサーとしての先見性を改めて考えてみたい。

14:50-15:50 石坂健治(日本映画大学) ※招聘講師
「東南アジア映画祭:その始まりの頃」
 「日本映画の一番いいマーケットは、理屈抜きにして東南アジアである」と断言していた永田雅一は、香港のプロデューサー、ランラン・ショウと組んで1954年に東南アジア映画祭を創始し、第1回を東京で開催した。その後、東南アジア映画祭(1954~56)→アジア映画祭(1957~83)→アジア太平洋映画祭(1984~)と改称を重ね、アジア各国の映画業界にとってはそれなりの機能を果たして今日に至っているが、一般にはほとんど知られておらず、恒常的な事務局も存在しないなど、“謎の映画祭”との印象もある。この発表では、同映画祭が始まった1950年代半ばの日本とアジアの映画状況をふまえ、永田が意図したこととその結果に焦点を当てることとしたい。

16:00-16:40 土田環(映画専門大学院大学)
「地続きの夢―川喜多長政と国際共同製作『蝶々夫人』」
 1954年から1955年にかけてローマのチネチッタで撮影された『蝶々夫人』(カルミネ・ガローネ)は、主演の八千草薫をはじめとして、日伊両国から多くの出演者やスタッフの参加した、戦後を代表する合作映画として知られている。本発表では、東宝の森岩雄とともにこの企画を実現した川喜多長政の思考を資料から検証しながら、出資比率や言語の問題を越えて、1950年代における「国際共同製作」がどのように考えられていたのか考察を行う。東洋と西洋の架け橋になることを企図して1920年代に活動を開始した川喜多は、『蝶々夫人』にいかなる夢を託したのか。あるいはまた、戦後の公職追放を経てもなお、その理想は国民国家のアイデンティティに回収されてしまうものだったのか。

16:50-17:50 マイケル・バスケット Michael Baskett 
(アメリカ カンザス大学 映画・メディア学科) ※招聘講師
「冷戦期アメリカが観た日本映画界:ジョンストン・プランの役割」(日本語使用)
 1945年以降、アジアでの米ソ文化冷戦は、技術向上、経済発展、映画興行などでアジア全体に広がった。米国映画協会、米国映画輸出協会の両会長を務めたE・ジョンストンは、米大統領の命を受け1954~1959年の間に3回来日。「ジョン ストン・プラン」を発表、その経済援助計画には日米映画相互輸入の自由化促進、日本や東南アジアの経済発展や技術向上促進さえ含まれていた。日本映画業界による「東南アジア映画祭」に米映画をエントリーさせようとしたジョンストンは、経済と文化の両面から影響力を行使しようとしていたのであった。本報告では、ジョンストンが冷戦体制下における日本映画界の役割をどう評価していたのか検討していきたい。

◆お問い合わせ先
演劇映像学連携研究拠点事務局
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