公募研究7「河竹黙阿弥の作品研究」

    研究代表者 岩井眞實(福岡女学院大学人文学部表現学科教授)
    研究分担者 今岡謙太郎(武蔵野美術大学教養文化研究室教授)
          埋忠美沙(日本学術振興会・特別研究員PD)
          金子健(文化庁文化財部伝統文化課文部科学技官)
          倉橋正恵(同志社女子大学文学部非常勤講師)
          寺田詩麻(早稲田大学オープン教育センター非常勤講師)
          吉田弥生(文京学院短期大学英語科准教授)

 ○研究成果概要(平成24年度)
 本研究グループは、二〇一〇年度から「黙阿弥研究会」を開催している。今年度は、主に二つの研究をおこなった。第一に、昨年に引き続き作品研究と台本および正本写合巻の翻刻。第二に、黙阿弥生誕二百年となる二〇一六年の刊行を目指し、『黙阿弥図録』の編集。それぞれの詳細は以下の通り。

①作品研究と台本および正本写の翻刻。
 未翻刻台本一作(『小幡怪異雨古沼』)および正本写三作(『小幡怪異雨古沼』『怪談木幡小平次』『糸時雨越路一諷』)の翻刻をおこない、その成果を国立劇場調査養成部編の叢書『未翻刻戯曲集』『正本写合巻集』に反映させた。
 『糸廼時雨越路一諷』と『怪談木幡小平次』の台本は現在未発見であり、初演時に出版された正本写によって、作品の詳細を知ることができる。また『小幡怪異雨古沼』は初演の上質な台本が現存するものの、従来紹介されていなかった。黙阿弥作品の研究の進展と上演の活発化を目指し、これら未翻刻台本と正本写を翻刻して広く公開した。

②黙阿弥生誕二百年記念『黙阿弥図録』の編集。
 これまでの黙阿弥に関する図録としては、早稲田大学演劇博物館において開催された『没後百年河竹黙阿弥』(一九九三年)の図録があるものの、これは二十年前の成果である。そこで「黙阿弥研究会」における最新の研究成果を反映させた『黙阿弥図録』の出版を目指し、編集会議をおこなった。黙阿弥生誕二百年にあたる二〇一六年の出版を目指している。目次と各章の執筆者を決定し、各自執筆作業に入った。昨年度、「黙阿弥研究会」が執筆を担当した国立劇場のウェブサイト「文化デジタルライブラリー 黙阿弥」の内容を基盤としつつ、台本翻刻と絵画資料など、新たな項目をいくつか追加してより充実した内容になる見込みである。掲載図版は、『没後百年河竹黙阿弥』に重要資料が網羅的に掲載されているため、未紹介資料を多数収録することを目指して資料調査をおこなった。