公募研究6「寺山修司の創作―一次資料から明らかにする活動実態―」

    研究代表者 岡室美奈子(早稲田大学文学学術院教授)
    研究分担者 梅山いつき(日本学術振興会特別研究員PD)
          安田茂美(株式会社インプレシオン):現代文化論
          池田百合(電通株式会社):現代文化論

 ○研究成果概要(平成24年度)
 現在演劇博物館が所蔵する寺山関連資料は約60点あり、そのほとんどがチラシやパンフレットといった配役等公演内容がほぼ確定した後に制作されたものである。1960年代の他の小劇場演劇と同様、演劇実験室・天井桟敷も横尾忠則や粟津潔を美術担当として招き、手の込んだチラシ・ポスターを制作していた。よってそうした宣伝材料からは寺山をはじめとする演劇実験室・天井桟敷のねらいや社会に対しどのようなインパクトを与えようとしたかといった集団としての指針が視覚化されている。だが、どのような過程を経て上演に至ったかを知るためにはこうした資料だけでは情報不足である。そこで本研究では10月から11月にかけて寺山資料のコレクター自宅へ赴き、上演・上映回数の多かった作品を中心に関連資料の調査を行い、多くの資料を閲覧することができた。演劇実験室・天井桟敷はいち早く海外公演を勢力的に行った集団である。『人力飛行機ソロモン』や、『毛皮のマリー』などは上演国でオーディションを行い、現地の人びとを巻き込む形で上演された。それ以外の作品においても寺山は集団による共同制作を重んじており、即興性を重視した。そのことは寺山の演劇論から明らかではあるが、実際には入念な準備と精緻な構成の上に共同作業は存在していた。なお調査では各資料の詳細を記した一覧を作成すると共に、資料を撮影した。残りの研究期間をつかって資料の読み込みを行う予定である。