公募研究5「「映画以後」の幻灯史に関する基礎的研究」
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研究代表者 鷲谷花(早稲田大学文学学術院非常勤講師)
研究分担者 岡田秀則(東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員)
紙屋牧子(武蔵野美術大学非常勤講師)
坂尻昌平(武蔵野美術大学非常勤講師)
鳥羽耕史(早稲田大学文学学術院教授)
安井喜雄(神戸映画資料館館長)
土居安子(財団法人大阪国際児童文学振興財団主任専門員)
吉原ゆかり(筑波大学人文社会科学研究科准教授)
中野正昭(早稲田大学演劇博物館招聘研究員)
Robert Tierney(イリノイ大学東アジア研究科教授)
○研究成果概要(平成24年度)
神戸映画資料館及び大阪国際児童文学館の幻灯関連資料コレクションの目録をほぼ完成。大阪国際児童文学館の所蔵資料に関しては、所蔵全フィルムのエッジコード及び状態調査、仕分け作業を行い、東京光音の協力による可燃性/不燃性の識別作業を経て、早稲田大学演劇博物館への寄贈を完了した。
存命の当事者に対する聞き取り調査を進め、8月には北海道・室蘭市にて、1954年の日鋼室蘭争議時の元労組教宣部長広田義治氏に、争議記録幻灯『日鋼室蘭首切反対斗争記録 嵐ふきすさぶとも』全2巻の製作及び運用に関するインタヴューを行い、手書きの台本、配給会社発行の『幻燈ニュース』など、貴重な資料のご提供をいただいた。10月には、幻灯フィルム・台本数十点を含む新日本窒素(現チッソ)労働組合旧蔵資料を所蔵している熊本学園大学・水俣学研究センターを訪問、元新日窒第一労組委員長の山下善寛氏に、1960年代当時の幻灯の運用状況について伺ったほか、同センターに、合化労連製作『みんなで守ろう 水俣のたたかい』(1962)、加古里子作画構成・東大セツルメント川崎こども会製作『自転車にのってったお父ちゃん』(1956)など、所在不明だった貴重な幻灯フィルム及び台本が所蔵されていることを確認した。北海道での調査成果については『北海道新聞』(2013年3月19日夕刊)、九州での調査成果については『朝日新聞』西部版(2013年1月7日朝刊)にそれぞれ紹介記事が掲載された。
8月26日に、神戸映画資料館にて、研究代表者・鷲谷花による戦後日本の社会運動における幻灯の利用についてのレクチャーと併せて、加古里子構成・東大セツルメント川崎こども会製作『ぼくのかあちゃん』及び、『嵐ふきすさぶとも』全2巻の幻灯機を用いた上映を行った。『嵐ふきすさぶとも』は、オリジナル台本の指示に従い、労働歌のバックコーラス付きの上映を行った。
山形県の実在の農家をモデルとした農村生活改善に関する教育幻灯『嫁の座』の版権の帰属を確認し、使用許諾を得たうえで、ニュープリントを作成した。9月16日、『嫁の座』、『ぼくのかあちゃん』ほか3本の神戸映画資料館・大阪国際児童文学館所蔵の幻灯を、シネマトリックス主催「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー2012」の公式プログラム「幻灯・光の紙芝居」として、早稲田大学大隈タワー地下多目的講義室にて、講談師・宝井琴柑氏の語りにより上映した。