公募研究4「文明戯の多角的研究」

    研究代表者 瀬戸宏(摂南大学外国語学部教授)
    研究分担者 飯塚容(中央大学文学部教授)
          平林宣和(早稲田大学政治経済学術院准教授)
          鈴木直子(早稲田大学演劇博物館招聘研究員)
          李宛儒(早稲田大学演劇博物館招聘研究員)

 ○研究成果概要(平成24年度)
 研究の過程で、6に記した研究会(王鳳霞『文明戯考論』合評会など)を開催した。また12月22日、23日中国北京、前門建国飯店で開催された“新潮演劇与新劇的発生”国際学術研討会に参加し、研究成果を発表し、中国の研究者と交流した。
 その研究成果は次の通りである。いずれも中国語で執筆・発表した。(近く同研討会論文集が刊行される予定である)


飯塚容 文明戯劇本的六種類型
鈴木直子 洪深『趙閻王』作為新劇的意義
瀬戸宏 再論春柳社在中国戯劇史上的位置-兼談中国話劇開端是否春柳社
平林宣和 古装新戯与京劇国粋化-1910年代京劇之新・旧・古
陳凌虹 “新劇倶楽部”史料拾遺
李苑儒  台湾新劇発展的源頭与脈絡-従商業劇場里的<改良劇>到知識分子的<新劇>
魏名? 以多種視覚重新探討論《黑奴?天録》 
大江千晶「穆儒丐思想軌迹之一端-以旧劇改革為中心」


 これらは、研究計画書あげた研究方法-関連する研究者、特に若手研究者への本研究参加依頼(陳、魏、大江論文)、中国人研究者との討論・学術交流重視(12月研討会参加)、中国人研究者の研究成果の日本国内での紹介(王鳳霞『文明戯考論』合評会)に基づく成果であった。
 また研究目標として設定した、文明戯の発端問題-清末学生演劇の実態研究・春柳社の位置(瀬戸、陳、魏論文)、1920年代以降の文明戯の上演状況(鈴木論文)、台湾への文明戯の伝播とそれが台湾近代劇成立に与えた影響(李論文)、最盛期の文明戯の上演形態(飯塚論文)などの課題に一定の解決を与えるものでもあった。平林論文も、文明戯と京劇の影響関係についての研究成果である。瀬戸論文は、「中華読書報」2012年12月26日付記事「“中国話劇開端是否春柳社”再起争議」で紹介された。以上の研究では、早大演劇博物館の関係資料が積極的に活用されたこともいうまでもない。
 各論文は、いずれも「文明戯の多角的研究」にふさわしい研究成果であった。研究計画書で設定した一年間の研究目標は、一部を除いて基本的に達成されたと言えよう。