テーマ研究7「能・昆劇の比較研究―日中伝統演劇の現在と未来」
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研究代表者 佐藤信(座・高円寺 芸術監督)
研究分担者 竹本幹夫(早稲田大学文学学術院 教授)
鈴木直子(早稲田大学演劇博物館 助手)
梅山いつき(早稲田大学演劇博物館 招聘研究員)
内野儀(東京大学総合文化研究科 教授)
ダニー・ユン(香港現代文化研究所 代表)
川口智子(座・高円寺 企画・制作・演出)
○研究成果概要(平成23年度)
2001年共にユネスコ世界無形文化遺産の指定を同時に受けた日中の伝統演劇能と昆劇は、それぞれが依拠する「謡曲」「昆曲」との関係性など、演劇的な共通部分が少なからずある。本研究は、世界の共通遺産としてその価値が認定された能、昆劇について、従来必ずしも着目されていなかった継承者の育成、技芸、演目の継承、発展を対象にした公的な支援、およびあたらしい創造への探求についての比較研究を目的としている。具体的には、日中の研究者、能、昆劇の実演家、さまざまな立場の現代芸術の関係者(演出家、批評家、支援組織スタッフなど)が協働して研究会・ワームショップを行うことで、①無形文化遺産指定後十年間の能、昆劇の動態研究、②古典演劇継承のための共通課題の整理、③現代演劇との交流による未来への可能性の検証、④実演家相互の技術交流と技術訓練方法の記録、データベース化などを目標として2011年度より研究活動を開始した。
①「能」「昆劇」についての基調講演
2011年度は研究初年度にあたるということもあり、本研究がどのような研究フレームをもって活動を進めていくかということが大きな焦点となった。この論議に入る前に、それぞれの伝統芸能についての理解を深める方法として、「能」「昆劇」の研究者による基調講演を行い、双方の実演家・研究者そして現代演劇の関係者とともに知識の共有を行った。これにより「能」「昆劇」がそれぞれにかかえる問題を整理し、保存・発展につながる具体的な研究フレームの提案を行った。
②「能」「昆劇」をとりまく文化機関の比較研究
6月および11月に香港で開催されたシンポジウムでは、能と昆劇における人材育成、マネジメントなどの創造環境の視点からの比較研究を行った。