テーマ研究6「演劇研究基盤整備:舞台芸術文献の翻訳と公開」

    研究代表者 秋葉裕一(早稲田大学理工学術院・教授)
    研究分担者 藤井慎太郎(早稲田大学・文学学術院・教授)
          平林宣和(早稲田大学・政治経済学術院・准教授)
          堀切克洋(東京大学大学院・総合文化研究科・博士課程)

 ○研究成果概要(平成23年度)
 ヨーロッパ各地域(ロシア、ドイツ、フランス、アメリカなど)における演劇研究者の参集によって平成22(2010)年度に開始した本研究課題では、平成23(2011)年度より新たに中国や東南アジア地域に対象地域を拡大し、翻訳文献のさらなる拡充を図る一方で、ヨーロッパ地域における新テーマとして、1930年代のヨーロッパにおける文化的、社会的、政治的変動を言語横断的に分析する「1938年問題研究会」を立ち上げ、合計3回の公開研究会を開催した。また、初年度の成果である「ヨーロッパ世紀末転換期演劇論」に関しては、2011年12月に早稲田大学において開催された「日本演劇学会 秋の研究集会」との共催でシンポジウムを開催し、本研究課題全体に関する方針を含め、数多くの演劇研究者・批評家に対して積極的な情報発信を行った。
 平成23年度の具体的な成果物としては、以下10件(前年度の増補版3件を含む)の外国語文献の翻訳および3件の解説文の公開が挙げられる(プロジェクト特設サイトにおいて無償公開)。【ドイツ】ジェルジ・ルカーチ『近代戯曲の発展史』(谷川道子訳)【フランス・ベルギー】アンドレ・アントワーヌ編「自由劇場」(横山義志訳)、モーリス・ポトゥシェール「人民劇場」(田中晴子訳)、モーリス・メーテルランク「小話~演劇について~」(穴澤万里子訳)【中国】傳謹「東洋芸術のアイデンティティ」(平林宣和訳)、焦菊隠「演出家・作家・作品」(瀬戸宏訳)【メキシコ】ドナルド・H・フリッシュマン「現代マヤ演劇と民族紛争」(里見実訳)【ペルー】ミゲル・ルビオ・サバタ「北京オペラについてのノートと考察」【コロンビア】エンリケ・ブェナベントゥーラ「コロンビアの新しい演劇」「文化と政治」(里見実訳)【ブラジル】アウグスト・ボアール「演劇を通して何かを言いたい俳優と非俳優のための200のエクササイズとゲーム」(里見実訳)【中国解説】瀬戸宏「解説 焦菊隠『演出家・作家・作品』」、平林宣和「解説 傳謹『東洋芸術のアイデンティティ』」【ラテンアメリカ解説】里見実「中南米演劇 解題のためのノート」

 なお、翻訳文献の選定については初年度の方法を踏襲し、言語別に設けられた翻訳代表者(谷川、藤井、鴻、里見、平林)が主導的に対象文献を探査し、若手研究者を含む翻訳分担者の斡旋を行った。また、課題全体の方針については、必要に応じて各代表者に参集を呼びかけ、全員の承認を経て決定した。