公募研究11「日本における近代音源資料アーカイブ-蝋管以降の特殊音源を中心として-」

    研究代表者 飯島満(東京文化財研究所無形文化遺産部音声映像記録研究室長)
    研究分担者 宮田繁幸(東京文化財研究所無形文化遺産部部長)
          中山俊介(東京文化財研究所保存修復科学センター近代文化遺産研究室長)
          大西秀紀(立命館大学文学部非常勤講師)
          櫻井弘(独立行政法人日本芸術文化振興会国立文楽劇場企画制作課長)
          柳知明(大阪芸術大学博物館事務長)
          八日市屋典之(金沢蓄音機館館長)
          永井美和子(早稲田大学演劇博物館)
                    

 ○研究成果概要(平成23年度)
 2009年度より調査を継続しているフィルモン音帯(『無形文化遺産研究報告』第5号に調査結果を報告)については、経年劣化やそれにともなう変形、あるいは断裂によって再生不能と考えられていた演劇博物館所蔵音帯を、東京文化財研究所保存修復センターの中山が中心となって修復。その一部は演劇博物館所蔵の再生機(確認した限りにおいて公的機関では唯一動態保存されている)での再生にも成功し、収録内容をデジタル化することができた。修復に至る経緯は、中山が第24回近代の文化遺産の保存修復に関する研究会「音声・映像記録メディアの保存と修復」で言及し、『保存科学』第51号に修復手法の詳細を報告。更に、懸案であった国立国会図書館所蔵フィルモン音帯の現物確認調査を行った。国会図書館でのみ現存が確認されている資料の一部についても、演博所蔵再生機によるデジタル化を実施。今後も継続して3機関で共同の調査を行う予定である。
 今年度からは、新たに金沢蓄音機館ならびに大阪藝術大学が所蔵する出張録音盤と長時間レコードにも調査を広げ、東京文化財研究所に移送し、再生と音声収録を試みる予定であったが、震災の発生とその影響により資料搬送等に不安が生じた事もあり、この方法は断念せざるをえなかった。
 そこで代替案として、出張録音盤については、主として飯島・永井が担当し、まず東京文化財研究所が所蔵するフランス・パテ社製SP(1911年吹込み)の悉皆調査を行い、所蔵一覧を作成。さらに音声再生可能な専用機材をレンタルし、現在までに14枚28面の音声をデジタル化した。この調査研究の詳細は『無形文化遺産研究報告』第6号に掲載した。
 長時間レコードについては、主として大西が担当。東京文化財研究所が所蔵するニットー長時間レコード(収録時間は片面で通常の10インチSPの約3倍)のうち7枚を、先年のGCOEで成果をあげた義太夫レコード復元の技術を応用し、再生音をデジタル化。その一部を『日本音楽伝統センター所報』第12号で報告。更に京都市立大学日本音楽伝統センター主催の「日本の希少音楽にふれる」の12月のセミナーで発表・公開した。