公募研究8「近代日露演劇交流屠蘇の文脈」
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研究代表者 上田洋子(早稲田大学文学学術院非常勤講師)
研究分担者 永田靖(大阪大学大学院文学研究科教授)
藤井慎太郎(早稲田大学文学学術院教授)
粕谷紀子(早稲田大学文学学術院非常勤講師)
内田健介(千葉大学大学院人文社会科学研究科修了)
伊藤愉(一橋大学大学院博士後期課程 日本学術振興会研究員DC)
斉藤慶子(早稲田大学文学学術院博士後期課程)
○研究成果概要(平成23年度)
本研究は20世紀前半における日露演劇交流が近現代の演劇史上で果たした役割を再考するものである。早稲田大学演劇博物館には1928年の歌舞伎ソ連公演の貼込帳、野崎韶夫や岡田嘉子の収集品他、日露演劇交流を証言する資料が多く所蔵されており、未整理のものも少なくない。これらを整理し、日露および世界の研究者の研究に供して研究交流の場を設けていくことを目指す。今年度は1928年歌舞伎ソ連公演に関する調査・研究を中心に据え、貼込帳記事をすべて翻訳し、日本演劇研究者と共同でその歴史的意義を考える機会を持った。
1928年歌舞伎ソ連公演貼込帳記事に関しては、収録記事をリスト化し、ロシア演劇・文学研究者で分担して全訳をする体制を設けた。7名の研究者が分担して夏に翻訳作業を開始、年度内に7 割程度の翻訳を終えることができた。また、演劇博物館、早稲田大学図書館、およびモスクワ、サンクトペテルブルグのアーカイヴで調査を行い、不足分の記事などを補い、適宜翻訳を行った。また、合計6 回の研究会を開催、歌舞伎ソ連公演貼込帳を用いた研究の可能性について討議を重ねた。ロシアにおける資料に関しては研究協力者のロシア科学アカデミー文学研究所上級研究員マリヤ・マリコワ氏に歌舞伎ソ連公演と新聞・雑誌メディアに関する調査・資料提供・論考の執筆をいただいた。
2012年1月21日にはこれらの研究を土台として研究分担者・協力者に加えて日露映画研究の岩本憲児教授を迎えてシンポジウム「演博コレクション・1928年歌舞伎ソ連公演貼り込み帳と日露演劇交流研究の可能性」を開催。貼込帳を新たな翻訳とともに紹介し(上田)、歌舞伎とロシア演劇・映画の研究者・演劇批評家による研究成果を踏まえた討論を行った(永田、鴻、児玉、岩本教授)。さらに、のマリコワ氏による、同時代ソ連の文脈における歌舞伎公演の位置づけに関するペーパー発表(翻訳:内田)、および若手研究者による日露演劇交流をテーマとする研究発表がなされた(斉藤、イワノワ、中村)。
貼込帳の他に、未整理であった演博所蔵野崎韶夫旧蔵ロシア演劇資料の整理に着手し、バレエ関連写真と書簡などの資料をスキャニングした。