公募研究6「河竹黙阿弥の作品研究」

    研究代表者 岩井眞實(福岡女学院大学表現学科教授)
    研究分担者 今岡謙太郎(武蔵野美術大学教養文化研究室教授)
          埋忠美沙(早稲田大学文化構想学部非常勤講師)
          金子健(文化庁文化財部伝統文化課文部科学技官)
          倉橋正恵(同志社女子大学文学部非常勤講師)
          寺田志麻(早稲田大学オープン教育センター非常勤講師)
          日置貴之(東京大学大学院博士課程)

 ○研究成果概要(平成23年度)
 本研究の目的は、幕末から明治に活躍した歌舞伎作者・河竹黙阿弥の作品研究である。黙阿弥の生誕200年を目前に控えた今、黙阿弥研究のさらなる発展を促すために、昨年度から拠点において「黙阿弥研究会」を発足し、黙阿弥作品の資料調査と作品分析をおこなう共同研究を開始した。本年度の研究成果は、以下の通りである。

①資料(写本、正本写、番付)の調査と作品研究をおこなった。本年度は以下6作を対象とし、研究会で討論をおこなった。対象とした作品は以下の通り。「桜清水清玄」(文政13年)、「音菊家化物」(天保9年)、「都鳥廓白浪」(嘉永7年)、「けいせい面影桜」(文久3年)、「善悪両面児手柏」(慶応3年)、「西洋噺日本写絵」(明治19年)。
②上記の作品の中から、台本2作(「桜清水清玄」「都鳥廓白浪」)と正本写2作(「音菊家化物」「都鳥廓白浪」)の翻刻をおこなった。このうち「都鳥廓白浪」は黙阿弥の初期の代表作で現在も上演される演目だが、これまで部分的な翻刻しかなく作品の全貌は知られていなかった。そこで未翻刻台本(演劇博物館所蔵)三幕と、台本に未収録の場面を収録する正本写(興行に取材した絵本)の翻刻をおこない、作品の全貌を詳らかにした。併せて原作である「桜清水清玄」(二代目勝俵蔵作)の台本(松竹大谷図書館所蔵)の翻刻もおこない、二作を比較することで黙阿弥の作劇法を分析した。これらの成果は、国立劇場調査養成部刊『桜清水清玄・都鳥廓白浪〔未翻刻戯曲集18〕』『都鳥汀松若〔正本写合巻集8〕』『御家のばけもの〔正本写合巻集9〕』に収録し、広く一般に公開した。
③日本芸術文化振興会のwebサイト「文化デジタルライブラリー 舞台芸術教材」のうち、「黙阿弥」(http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/)について、項目選定と原稿執筆をおこなった。本サイトは多くの歌舞伎ファンの眼に触れるものであり、研究会で取り組んでいる黙阿弥研究の最新の成果を広く一般に公開することができた。