公募研究3「日本映画における〈国家〉の表象と文化的〈公共性〉の構築に関する学際的研究」

    研究代表者 山本佐恵(日本大学芸術学部 非常勤講師)
    研究分担者 畑中朋子(拓殖大学工学部 准教授)
          松谷容作(神戸大学大学院人文学研究科 学術推進研究員)
          畑あゆみ(山形ドキュメンタリー映画祭事務局 職員)
          溝渕久美子(中部大学 非常勤講師)
          洞ヶ瀬真人(ハーバード大学イエンチン研究所 客員研究員)
          土山陽子(フランス社会科学高等研究院芸術言語研究所 博士課程)

 ○研究成果概要(平成23年度)
①フランス社会科学高等研究院(CRAL-EHESS)との共同シンポジウム“Le Japon d'apres-guerre a travers ses films, de 1945 a nos jours”「映像に見る戦後の日本社会 1945年から現在まで」(2011年12月9日、於・パリ日本文化会館)。
 第一部では、「戦後の復興と冷戦下の核の脅威」をテーマに、ドキュメンタリー、あるいはフィクションを通して描かれた原爆の記憶と核の存在について検討した。第二部では、高度経済成長期における日本独自の文化的発展を、視覚メディアの多様性とともに辿った。第三部では、報道映像も含めた現代日本におけるメディア体験を考察し、全体討議を行った。
 本チームからは土山陽子、松谷容作、増田展大が研究発表を行い、海外の研究者と活発な議論を行った。また、港千尋氏(多摩美術大学教授)に、写真・美術作品における広島の記憶とその再建のプロセスについて基調講演をしていただいた。
 その他、ジャン=マリー・シェフェール、クロード・エステーブ、アンドレ・ギュンテール(以上EHESS)、ミカエル・リュケン、バーバラ・モーテス(以上INALCO)、グザビエ・マルテル(フランス国立美術館連合RMN)の各氏が参加した。
②公開研究会「映画=表象の政治性」(2012年1月28日、於・立命館大学)。本研究会は、研究者分担者が一年間の研究成果を公表し、議論を深めることを目的としている。本チーム外から三名の招聘講師を迎え、研究発表と全体討議を行った。
 第一部では、「日本映画の政治学」をパネル・テーマとし、山本佐恵「戦時下の文化宣伝における「国家」の表象」、池川玲子(実践女子大学・非常勤講師)「「満洲」移民プロパガンダとジェンダ― ―坂根田鶴子監督『開拓の花嫁』を中心として」、洞ケ瀬真人「監督者の創生――映画の生産と消費を担う監督像」、溝渕久美子「映画法下における原作・シナリオの懸賞制度と映画の公共性」の研究発表が行われた。第二部では、「歴史・理論・表象」をパネル・テーマに、土山陽子「映画と歴史叙述:第二次世界大戦の記録映像から」、岡本源太「アビ・ヴァールブルクと映画的想像力の政治学」、篠木涼   
「情動の測定から操作へ――ウィリアム・M・マーストンによる嘘発見器と映画の心理学をめぐる批判的考察」の研究発表が行われた。第三部では、映画、美術、雑誌メディア、文学、心理学を視座におきながら、「国家」の表象形成とその流通について全員で討議した。