公募研究2「坪内逍遙遺文の網羅的収集調査と紹介に関する研究」
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研究代表者 松山 薫(早稲田稲田大学戸山図書館職員)
研究分担者 菊池 明(演劇博物館招聘研究員)
梅澤宣夫(早稲田中学高等学校教諭)
濱口久仁子(演劇博物館招聘研究員)
林 京平(逍遙協会 理事)
○研究成果概要(平成23年度)
[1]逍遙自筆書簡の原本調査・翻刻・解説他
・逍遙書簡2052通の原本調査を実施し、翻刻・解説を終了した。
財団法人逍遙協会では、長年坪内逍遙の書簡を収集し調査を続けてきたが、当研究会ではその中から早稲田大学(図書館・演劇博物館・大学史資料センター)と逍遙協会所蔵の計2052通を今回の調査対象とし、翻刻・解説を終えた。書簡の宛先は110名に及び、内容は非常に多彩で、逍遙の作品執筆の意図や創作過程、門下生との交流、シェイクスピア翻訳に向ける情熱、事業実施に向け用意周到な緻密さ等を読み取ることが出来、初出資料が多くたいへん貴重である。坪内逍遙研究、また近代演劇史研究の上でも意義のある資料である。現在刊行のための編集作業が進行中である。
・今回の研究では、書簡文の翻刻にとどまらず、宛先の人物の経歴業績、逍遙との関係を調査し、一通ごとの書簡の背景を探りながら詳細な解説を付した。
・当初の予定には無かったが、追加研究として雑誌『芸術殿』掲載書簡(293通)を新たに加えた。現在原本の所蔵が不明のものも含まれるが、逍遙逝去直後の収録であり、当時の所蔵者(宛先人本人)による解説も含まれるため、多少の重複はあるが、解説を付記した。また、演劇博物館のご厚意により新収蔵の47通も研究対象として新たに加えた。
・総調査書簡数は2392通となった。
[2]演劇博物館・逍遙協会所蔵逍遙関係写真(逍遙肖像・集合写真・著書・関連写真・一部書簡絵葉書)約1000件のデジタル化が完了し、その中の一部は逍遙書簡展展示用写真として使用された。また今後刊行予定の『坪内逍遙新集』(『逍遙書簡集』『逍遙日記』『逍遙書誌』)の図版にも活用され、『坪内逍遙新集』完成後は、デジタルデータは演劇博物館で利用される予定。
[3]研究論文
濱口久仁子「明治四十五年『新愛知』新聞にみる名古屋における坪内逍遙の動向とその周辺」(『演劇研究』35号、2012年3月、早稲田大学演劇博物館)