テーマ研究3「舞台芸術 創造とその環境 日本/世界」
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研究代表者 藤井慎太郎(早稲田大学文学学術院准教授)
研究分担者 曽田修司(跡見学園大学教授)
松井憲太郎(富士見市民文化会館キラリふじみ館長)
上田洋子(早稲田大学演劇博物館助手)
恵志美奈子(世田谷パブリックシアター学芸職員)
○研究成果概要(平成22年度)
2010年度はまず4月に、モレキュラーシアターとの共催により『バレエ・ビオメハニカ』の試演、およびラウンドテーブルを開催し、独特の作品哲学と方法論を持つモレキュラーシアターの作品および創造過程に焦点を当て、演劇博物館で開催される企画展示およびラウンドテーブルを通じて、さらにその背景にあるロシア人演出家メイエルホリドの今日の日本における意義を検証した。10月にはドラマトゥルクのヴァルダ・フィッシュ氏を招いて、イスラエル演劇の歴史とドラマトゥルクの役割について研究会を開催した。11月にはフェスティバル/トーキョーとの共催により、世界の第一線で活躍するアーティストを迎えてF/Tユニバーシティを開催し、今年度はジゼル・ヴィエンヌ(フランス)、ロジェ・ベルナット(スペイン)を講師として迎え、その独特の創造の美学と方法論を学んだ。同じ11月には、演劇におけるオーラル・ヒストリー研究の準備段階として、先行する美術史の領域から加治屋健司氏を招いて美術史におけるオーラル・ヒストリーの展開と課題について話を聞いた。2011年1月にはオーストラリア、メルボルン大学准教授でドラマトゥルクでもあるピーター・エカソル氏を招き、現代演劇におけるドラマトゥルギー概念を再考する研究会を開催した。2月には前年度に実施したベン・サントス・カバンゴン氏招聘事業を受け継ぐかたちで、世田谷パブリックシアターとの共催によりPETA(フィリピン教育演劇協会)のアーニ―・クロマ、クリス・ゴンザレス両氏による研究会を開催し、ワークショップ・ファシリテーターの養成の手法、社会認識・自己認識の変化を促すワークショップの方法論を学んだ。さらに同月には「TPAM in Yokohama」と連携してベルギーよりユーゴ・ドゥ・グレーフ氏を招聘し、フェスティバルの今日的意義を問うラウンドテーブルを開催したほか、ベルギー・フランダース地域の文化政策に関して聞き取り調査をおこなった。外部機関と連携することによって単独ではなしえないような研究と実践が融合したプロジェクトを実現することが可能になり、その成果もまた広く演劇界に還元できたと自負している。