テーマ研究4「現代日本演劇の海外への紹介・翻訳プロジェクト」
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研究代表者 高橋敏夫(早稲田大学文学学術院教授)
研究分担者 小田島恒志(早稲田大学文学学術院教授)
本浜秀彦(沖縄キリスト教学院大学准教授)
岩嵜誠(株式会社早川書房社員)
ハルオ・シラネ(コロンビア大学教授)
○研究成果概要(平成21年度)
日本の優れた現代演劇を海外に向けて紹介し翻訳するのを目的にはじめた本研究。5カ年計画の第一年目は、実際の活動期間が5ヶ月だったので、研究計画・方法に従い研究を実行とともに、今後の研究全体のプランの確認と検討を行った。
現代日本演劇の国際化を進め、それを呼び水として海外との演劇を通した国際交流を推進するためには、まず、従来の紹介と翻訳および公演の実態を調査して問題点を洗い出す必要がある。これまでの海外公演について、主要な劇団への聞き取り調査をはじめるとともに、公演をおこなった劇団の主催者、演劇の国際交流を進める団体の関係者に長時間インタビューを試みた。インタビューは「演劇的国際交流の現在」(DVD版)にまとめ、これが今年度の研究成果報告書となった。
劇団ピープルシアターの主催者で、劇作家・演出家の森井睦氏には、日韓演劇フェスティバルにおける新たな取り組み(日本演劇を韓国の演出家が、韓国演劇を日本の演出家が演出し公演する)の画期的意義を、また、国際演劇協会の世界理事で舞台美術家の小田切よう子氏には、日本の短篇演劇の海外でのリーディング公演の可能性を語ってもらった。両氏の話で共通していたのは、日本の現代演劇は日本の現状をふまえるだけではなく、世界が求めている大きなテーマとどう関わるかを示さねばならぬということである。この点については、各劇団への聞き取り項目に加えた。
○研究業績
・著書
高橋敏夫『高橋敏夫書評集 「いま」と「ここ」が現出する』、勉誠出版、全333頁、2009年7月。
高橋敏夫『藤沢周平の言葉』、角川SSC新書、全224頁。
・論文
高橋敏夫「プレカリアート文学とプロレタリア文学のあいだに」『国文学 解釈と鑑賞』、至文堂(ぎょうせい)、27~34頁、2010年3月。
高橋敏夫「三好十郎『斬られの仙太』論」『グラフィケーション』、富士ゼロックス、38~39頁、2009年4月。
本浜秀彦「エキゾチシズムとしてのパイナップル ―沖縄からの台湾表象、あるいはコロニアル的な性的イメージ」『島嶼沖縄の内発的発展 経済・社会・文化』、藤原書店、272~296頁、2010年3月。
本浜秀彦「「オキナワン・コミックス」の表象文化学」『沖縄学入門』、昭和堂、198~224頁、2010年3月。
・学術講演
高橋敏夫「プレカリアート文学におけるホラー的なもの」、城西大学紀尾井校舎、2009年6月。