テーマ研究3「舞台芸術 創造とその環境 日本/世界」
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研究代表者 藤井慎太郎(早稲田大学文学学術院准教授)
研究分担者 熊倉純子(東京藝術大学准教授)
松井憲太郎(富士見市民文化会館キラリふじみ館長)
上田洋子(早稲田大学演劇博物館助手)
相馬千秋(フェスティバル/トーキョー プログラムディレクター)
○研究成果概要(平成21年度)
2009年度は、国外から複数名の講師を招聘し、学外の複数の機関と協力しながら、舞台芸術の創造と環境に関する問題系をめぐって、以下の研究活動を行った。まず、フェスティバル/トーキョーと連携した企画F/Tユニバーシティの枠内において、レバノン出身・在住のアーティスト、ラビア・ムルエとリナ・サーネーの両氏を招いて、レバノンという世界史的にも特異な地域において芸術創造を行うことの意義、さらにそれを取り巻く環境についての公開レクチャーを開催した(2009年11月)。ついで、英国文化政策の専門家であるジョゼフィーヌ・バーンズ氏を招聘し、日本文化政策学会と連携して講演会・研究会を開催し、英国における舞台芸術の環境整備を目的とした芸術文化政策の立案過程、英国の演劇政策の苦境の克服過程についてレクチャーを受け、日本の現状に対していかに応用できるか、議論を交わした(2010年1月)。さらに、アジア演劇創造研究センターと提携して、ロンドン・ゴールドスミス大学からクリッシー・ティラー氏、フィリピン教育演劇協会からベン・サントス・カバンゴン氏、シンガポール国立大学から滝口健氏を招聘し、英国、フィリピン、ひいては東南アジアの実例に関するレクチャー、また演劇デザインギルドによる実際のワークショップを通じて、演劇環境整備の主たる要因である教育と演劇とが結ぶことができる関係を問い直すことを目的として、連続セミナー・ワークショップ「アジア・演劇・教育」を開催した(2010年2月)。
②個別研究については、復活上演のための基礎研究にとどまっている。5年間の内に、基礎研究が実り、復活上演へと結びつくことができるよう努力するが、これも外部の上演団体との提携が必要になる。演劇博物館との研究連携をどのように創り上げていくかが、課題として浮かび上がってきた。
○研究業績
・論文
藤井慎太郎「ネーションの舞台 ケベックとフランダースの舞台芸術と表象の政治学」『早稲田大学文学研究科紀要 55?3』、5-20頁、2010年3月。
藤井慎太郎「On the Dramaturgical Field in Port B's Tokyo 'Tour Performances'」『Performance Research14-3』、28-43頁、2009年9月。
・著書
上田洋子『メイエルホリドの演劇と生涯 ―没後70年・復権55年(展示図録)』、編集・デザイン(全頁), 3-8頁(翻訳), 1頁, 13-60頁, 67-68頁(執筆)、2010年3月。
・学会発表
藤井慎太郎「Theatre en partage de code(s) - vers quel horizon ?」 演劇・舞踊・芸術環境「日仏交流の20世紀」、フランス国立図書館、2009年11月。
松井憲太郎「L'Avenir des projets conjoints」演劇・舞踊・芸術環境「日仏交流の20世紀」、フランス国立図書館、2009年11月。
上田洋子「シギズムンド・クルジジャノフスキイの散文における演劇的要素」、筑波大学、2009年10月。
上田洋子「Возможность исследования русско-японского обмена опытом в облости театра в Театральном музее им. Цубоути」、РГБИ、2009年11月。
・その他
藤井慎太郎「光の狂気 ロメオ・カステルッチ、ソチエタス・ラファエロ・サンツィオとその舞台」(解説)、フェスティバル/トーキョー上演プログラム、2009年12月。
藤井慎太郎「ロメオ・カステルッチ インタヴュー「劇場は暴力が可能であり、必要である唯一の場所である」」、晩成書房、44-49頁、2009年9月。
熊倉純子「ブリティッシュ・カウンシル 英国スタティツアー2009報告書Arts for Community Development & Regeneration」、ブリティッシュ・カウンシル、2010年1月。
相馬千秋「対談 相馬千秋」『エクス・ポ 5号』、2010年1月。