テーマ研究2「台本による歌舞伎作品復元の調査・研究」
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研究代表者 古井戸秀夫(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
研究分担者 鈴木英一(聖学院大学日本文化学科非常勤講師)
今岡謙太郎(武蔵野美術大学教授)
児玉竜一(早稲田大学文学部教授)
安冨順(桐朋学園短期大学演劇専攻非常勤講師)
○研究成果概要(平成21年度)
本研究は、①基礎研究と、②個別研究、からなる。
①基礎研究の目的は、早稲田大学演劇博物館所蔵の歌舞伎台本をデータ化して、公開することである。そのためには、1)データ化の作業、2)虫食いによる破損の修復、この二つが必要である。2009年度に対象とした歌舞伎台本は、小林文七旧蔵の狂言作者自筆の台本を中心とする172点のコレクションであった。1)については、今年度50点のデータ化を計画したが、予定以上に作業が順調に進み、172点をデータ化することができた。その一方で、2)に関しては、助成金の決定から計画の実行まで限られた時間の中で、実現できる範囲が限られてしまった。今年度は、試験的な補修の実習を行うのみであったが、その結果、引き続き、虫食い補修の講座を定期的に行う必要があることがわかった。虫食いの補修が終わらなければ、データの公開もできないので、この問題は重く受け止めなければならない。ただし、外部の研究者を中心とする、現在の体制では、虫食い補修の計画を進めていくことは困難が伴う。演劇博物館側の善処が求められるところであろう。
②個別研究については、復活上演のための基礎研究にとどまっている。5年間の内に、基礎研究が実り、復活上演へと結びつくことができるよう努力するが、これも外部の上演団体との提携が必要になる。演劇博物館との研究連携をどのように創り上げていくかが、課題として浮かび上がってきた。
○研究業績
・論文
児玉竜一「歌舞伎の演技」『かぶき手帖』2010年版、2010年1月。
安冨順「都の治助」『朱』第53号、2010年3月。
・学術講演
古井戸秀夫「シェイクスピアの時代における歌舞伎は何を描こうとしたのか?」新国立劇場「シェイクスピア大学校」、2009年11月。
・その他
今岡謙太郎「梅雨濡仲町」(翻刻)国立劇場・未翻刻戯曲集16、2010年3月。