公募研究11「無声映画のプラクティス復元研究」
-
研究代表者 上田学(早稲田大学演劇博物館助手)
研究分担者 碓井みちこ(早稲田大学演劇博物館客員研究員)
板倉史明(東京国立近代美術館フィルムセンター研究員)
今田健太郎(京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター特別研究員)
横田洋(大阪大学総合学術博物館研究支援推進員)
○研究成果概要(平成21年度)
本研究の目的は、無声映画期における、映画興行のプラクティスの一端を明らかにすることである。今年度は、演劇博物館が所蔵する、映画興行師の駒田好洋旧蔵資料(以下、駒田資料)を主要な対象として、デジタル化によって資料の共有化を進めながら、映画学のみならず、隣接諸学の研究者と共同で調査研究を実施した。具体的な活動内容として、以下の三点が挙げられる。第一に、駒田資料のスクラップブックのデジタル化である。駒田資料のスクラップブックは、無声映画の興行に関する新聞記事を所収しており、これらを研究で活用するために、データの採録を進めた。今年度は全6点中2点について、デジタル静止画像と対応したレコード数443件のデータを整備し、共同研究内における共有化を図った。第二に、館外機関が所蔵する駒田資料の共同調査である。太田市立新田図書館が所蔵する駒田資料のスクラップブック(※1)について、上田学(研究代表者)、今田健太郎(研究分担者)、大傍正規(研究協力者、早稲田大学演劇博物館GCOE・RA)が調査をおこない(群馬県、2月18・19日)、演博が所蔵するスクラップブックの欠落分について補完した。第三に、研究会を通じた研究交流の実施である。今年度は、早稲田大学を会場として二回の研究会を開催した(1月21日、2月27日)。第一回については上田が、第二回については板倉史明(研究分担者)と松谷容作(研究協力者、神戸大学大学院・博士後期課程)が、無声映画のプラクティスに関して研究発表し、参加者との活発な意見交換がおこなわれた。
※1 駒田好洋スクラップブック・データベース
○研究業績
・論文
上田学 「映画『紅葉狩』の位相―受容の場をめぐって」 『近代日本における音楽・芸能の再検討』 149~161頁 2010/3
板倉史明 「フィルム・アーカイブにおける映像資料の保存と復元 歴史学にとっての映画」 『歴史評論』715号 41~54頁 2009/10
板倉史明 「『史劇 楠公訣別』(1921年)の可燃性ネガフィルムを同定する」 『東京国立近代美術館研究紀要』14号 2010/3
今田健太郎 「歌舞伎の下座囃子と無声映画の和洋合奏をを比較する」 『近代日本における音楽・芸能の再検討』 57~67頁 2010/3
横田洋 「舞台俳優時代の衣笠貞之助」 『近代日本における音楽・芸能の再検討』 125~136頁 2010/3
横田洋 「衣笠貞之助の連鎖劇制作」 『演劇学論叢』11号 248~265頁 2010/3
・学会発表
碓井みちこ 「写し絵とは何か?」 早稲田大学小野記念講堂 2009/11
碓井みちこ 「Utsushi-e (Japanese Magic Lantern) as a Medium for Narration」 The Westin Bonaventure Hotel & Suites, Los Angeles 2010/3
横田洋 「玉乗り、映画、 首振り芝居―浅草芸能史の転換点」 京都府立文化芸術会館(京都) 2010/3
・その他
上田学 「『紅葉狩』のノンフィルム・マテリアル」 『演劇研究』33号 31~40頁 2010/3