公募研究9「アジアの無形文化における芸能的身体表現の研究」

    研究代表者 稲葉明子(早稲田大学演劇博物館客員研究員)
    研究分担者 細井尚子(立教大学異文化コミュニケーション学部教授)
            木村理子(東京大学大学院総合文化研究科学術研究員)
                    

 ○研究成果概要(平成21年度)
 本研究は、アジアの無形文化における芸能的身体表現の資料を収集し、仮面・仮頭・化粧、そして木偶をも含めた「身体表現」の文化的・社会的効能について、共時的・通時的な比較研究に発展させるに足る分析方法を模索するべく、グローバル化の進む現代にあって併存する「従来存在していた文化コード」「変化途上にある我々が共有している文化コード」に留意しながら、今、眼前にある身体表現が何者であるか、戦略的に検証しながら記録・蓄積し、問題点を発表することを目的とする。本年度は、これまでの海外研究者との連携をもとに、主に2つの方向で活動することができた。第一に、1938年にソビエト連邦の粛清の影響をうけて途絶えたフレーツァムを復活させたモンゴルのダシ・チョイリン寺の当事者を招いて、復元パフォーマンスを分析的に記録撮影するとともに、1月に立教大学アジア地域研究所と共催で行った国際シンポジウム「日本伎楽とチベット仏教チャムの比較研究-仮頭に注目して-」で研究発表と意見交流を行った。第二に福建省山間部に残る「華光」信仰に基づく儀式儀礼芸能の3日3晩の全過程について、木偶パフォーマンスと法師による儀礼の立ち現れ方を網羅的に記録した。こうしたコンテンツの分析にはまだ少々時間がかかるが、まずは映像資料を整理して早稲田大学演劇博物館演劇映像学連携研究拠点に寄贈し、メンバーそれぞれが今後それぞれのフィールドで成果を報告していきたい。


○研究業績
・学会発表
稲葉明子 「芸能素材データベースの留意点-仮頭調査からみえてきたこと」 立教大学太刀川記念館 2010/1
細井尚子 「仮頭を用いるアジアの諸芸能-日本の伎楽を起点に」 立教大学太刀川記念館 2010/1
木村理子 「チャムとは-モンゴル、ブータン、チベット、中国-」 立教大学太刀川記念館 2010/1