公募研究8「演劇の理論と実践、その現代における応用1 ―メイエルホリドの場合」

    研究代表者 上田洋子(早稲田大学演劇博物館)
    研究分担者 藤井慎太郎(早稲田大学文学学術院教授)
            楯岡求美(神戸大学大学院国際文化学研究科准教授)
            内田健介(千葉大学人文社会科学研究科博士課程)
                    

 ○研究成果概要(平成21年度)
 本研究はロシアの演劇人フセヴォロド・メイエルホリドが20世紀初頭に行った演劇理論の構築とその舞台における実践を考察するものである。なかでも、彼が考案した俳優訓練システムビオメハニカ、および1930年代に実現を目指した理想の劇場に焦点を絞り、それらが実際どのようなものであったか、極力可能な形での再現を通じて実際に目にすることで考察の立脚点を築くことを目的とした。2009年11月7日、12月27日、2010年1月16日にそれぞれ研究会を開催し、①メイエルホリド劇場模型製作 ②ビオメハニカ・ワークショップの実施、それぞれの方針を検討した。建築家の伊藤暁氏とともに、演博所蔵資料(川喜多煉七郎作成メイエルホリド劇場ポスター)を含む残された資料を検証してメイエルホリド劇場再現模型を作製。その際、観客と芝居の関係を中心に据え、また『堂々たるコキュ』(1922)の舞台に装置模型を設置した。さらに、研究期間終了後の2010年4月18日模型を囲む研究会を実施。メイエルホリド劇場の構想のもつ理念と実現可能性を演劇と建築の両面から立体的に検証する機会を設けた。また、メイエルホリドの孫弟子、アレクセイ・レヴィンスキー氏をモスクワから招聘し、5日間のワークショップを実施(2010年3月1日~5日)。公募・選考により、最終的に15名が参加、さらに連日15名程度の見学者があった。3月4日にはワークショップ参加者によるデモンストレーションを含めたシンポジウムを実施、ビオメハニカが現代に持つ意義を考察する場を設けた。メイエルホリド劇場で教えられていたビオメハニカを忠実に演劇の実践のための俳優訓練として伝えるレヴィンスキー氏の巧みな指導により、この訓練法の論理性と有効さが示された。このことはワークショップ後に実施した参加者アンケートからも明らかである。撮影した映像資料と併せて、2010年6月に再び研究会を実施し、検証する予定。2010年3月13日には2009年度の活動を総括する研究会を実施した。


○研究業績
・著書
上田洋子 『メイエルホリドの演劇と生涯 ―没後70年・復権55年』(展示図録) 編集・デザイン(全頁), 3-8頁(翻訳), 1, 13-60, 67-68頁(執筆) 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館 2010
藤井慎太郎 「フェスティバル/トーキョー09 ドキュメント」 『Hey Girl!』、『個室都市東京』 2010/5
・論文
上田洋子 「Возможность исследования русско-японского обмена опытом в облости театра в Театральном музее им. Цубоути」 『Национальный театр в контексте многонациональной культуры: архивы, библиотеки, информация』 2010
藤井慎太郎 「On the Dramaturgical Field in Port B's Tokyo 'Tour Performances'」 『Performance Research. 14-3』 28-43頁 2010/1
藤井慎太郎 「ネーションの舞台 ケベックとフランダースの舞台芸術と表象の政治学」 『早稲田大学文学研究科紀要 55-3』 5-20頁 2010/3
・学会発表
上田洋子 「シギズムンド・クルジジャノフスキイの散文における演劇的要素」 筑波大学 2009/10
上田洋子 「Возможность исследования русско-японского обмена опытом в облости театра в Театральном музее им. Цубоути」 РГБИ 2009/11