公募研究3「国内外における無形文化遺産保護条約一覧表記載の無形文化遺産の音声映像記録に関する調査研究」

    研究代表者 宮田繁幸(東京文化財研究所無形文化遺産部部長)
    研究分担者 飯島満(東京文化財研究所無形文化遺産部音声映像記録研究室長)
            高桑いづみ(東京文化財研究所無形文化遺産部無形文化財研究室長)
            俵木悟(東京文化財研究所無形文化遺産部主任研究員)
            永井美和子(早稲田大学演劇博物館保存修復担当)

 ○研究成果概要(平成21年度)
 本研究は、これまでに蓄積されてきた国内外の貴重な音声映像資料を対象として、そのデジタル化や活用方法を探り、将来の無形文化遺産のあるべきアーカイブ構築についての方向性を探ることを目的とする。具体的には、主にフィルモン音帯資料に関して、東京文化財研究所音声映像記録研究室を中心に調査研究を実施した。フィルモン音帯とは、昭和10年代初頭に日本で開発された長時間録音媒体(約130cm×3.5cmのエンドレステープ)で、最長36分の収録が可能であったという。当時としては画期的な方式であったが、第二次大戦の激化により、工場は軍需施設に転用された。製造販売の期間は実質5年程であったため、今日では半ば忘れ去られた存在となっている。
 現在、演劇博物館は56本のフィルモン音帯とその再生機1台を、東京文化財研究所は音帯5本を所蔵している。そこで演博所蔵の音帯と再生機を東文研のスタジオに搬入し、あわせて可能な限りの音帯を集め、再生音のデジタルアーカイブ化を図ることを計画した。基礎調査としては、現存未確認を含む音帯114種の一覧を作成した。網羅的な音帯のディスコグラフィーはこれが現在唯一のものとなる。一方、音声収録については、重複タイトルを含め76本の音帯を東文研に集めることができたが、劣化(硬化)により再生が困難あるいは不可能な音帯の多いことが判明したため、当面は再生可能なものから、複数の方式(再生機のスピーカからの直接集音・改造トーンアームによる音源採取など)によるデジタル化を行うこととした。いずれも初めてデジタル化された音源となるものと思われる。来年度からは、デジタル化と並行して、音帯の弾力性を回復するための薬品処理を、東京文化財研究所保存修復科学センター近代文化遺産研究室の協力により、行う予定である。良好な結果が得られれば、再生可能な音帯が増えるものと期待している。


○研究業績
・学術講演
飯島満 「昭和24年3月収録「鬼界が島の段」―文化財保護委員会作成音声資料をめぐって―」 江戸東京博物館ホール 2009/12
・その他
飯島満 「国立音楽大学附属図書館寄贈竹内道敬旧蔵音盤目録(4)」  『無形文化遺産研究報告』第4号 197~217頁 2010/3