公募研究2「狂言作者竹柴其水興行関係資料の基礎的研究と翻刻作業」
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研究代表者 神田由築(お茶の水女子大学大学院・人間文化創成科学研究科准教授)
研究分担者 木村涼(早稲田大学演劇博物館助手)
今岡謙太郎(武蔵野美術大学教授)
磯部孝明(総合研究大学院大学文化科学研究科日本歴史研究専攻博士後期課程)
中村緑(東京大学大学院人文社会系研究科文化資源学研究博士課程)
○研究成果概要(平成21年度)
本研究は、演劇博物館所蔵資料のうち竹柴其水興行関係資料とされる全109点の資料群(ロ30-1473-1~109)の目録を作成して全体像を把握し、その成果を踏まえて明治・大正期の狂言作者や興行についての研究を行うことが目的である。本年度は、資料を全点カラー撮影し目録を作成した。その結果、資料の写真・目録ともに将来的に公開が可能となった。
また目録より同資料群について次のような特徴が明らかになった。まず子分類として、場割役人帳、大道具帳、大道具附帳、衣裳附帳、台本、書抜き、唄本、小道具、チラシ、筋書、目録、俳優名簿、書簡、祭礼番付、その他という分類が可能である。これらは個別の芝居の上演に際して作成されたものとそうでないものに大まかに分けることができ、前者では役名と役者名が書かれた場割役人帳や、場面に使用される大道具とそれについての但し書きが書かれた大道具附帳が中心を占める。後者では狂言作者が所蔵する脚本の目録や狂言作者宛の書簡が中心である。年代は江戸期(3点)、明治期(8点)、大正期(12点)、昭和期(34点)、近代(2点)、記載無し(ただし近代か、50点)である。明治期の資料については、竹柴其水が活躍していた20年代のものはなく、30年代以降のもので、むしろ大正から昭和の戦前期が中心の資料群である。
以上の結果より、この資料群の年代が其水の時代よりも下ること、さらに同資料群は其水そのものよりも弟子筋の狂言作者などの関係資料ではないかということが判明した。
○研究業績
・論文
神田由築 「近世芸能につどう人びと」 『能と狂言』第7号 3~13頁 2009/4
神田由築 「豊後国杵築城下の段尻芸に関する史料について」 『論集きんせい』第31号 19~63頁 2009/5
神田由築 「府内藩 浜之市に集う人々」 大分県立先哲史料館『史料館研究紀要』第14号 1~10頁 2009/6
神田由築 「近世・近代移行期における甲府の遊所」 『年報 都市史研究』第17号 10~23頁 2010/2
神田由築 「近世の身分感覚と芸能作品」 『お茶の水史学』第53号 123~137頁 2010/3
磯部孝明 「明治初期の郵便為替掛屋用達―広瀬家の事例」 『郵便史研究』第28号 1~14頁 2009/9
磯部孝明 「明治後期三等郵便局の局員構成―三島郵便局の事例」 『郵政資料館研究紀要』創刊号 16~29頁 2010/3
・著書
神田由築 『江戸の浄瑠璃文化』 山川出版社 1~102頁 2009/8