武士のかたい誓言悦んでたべ知盛卿と聞に凝たる氣も逆立局を取て突退ヱヽ
無念口惜や我一門の怨を報はんと心魂を砕しに今夜暫時に術顕はれ身の上迄
しられしは天命〱まつた義経帝を助奉るは天恩を思ふ故是以て知盛が恩にきるべきいは
れなしサア只今こそ汝を一太刀亡魂へ手向んと痛手によろめく足踏しめ長刀追取
立向ふ弁慶押へだて打物わざにて叶ふまじと珠数さら〱と押もんでいかに知盛
かくあらんと期したる故我もけさより船手に廻り計略の裏をかいたれば最早悪念發起
せよと持たるいらたか知盛の首にひらりと投かくればムヽ扨は此珠数かけたのは知盛
に出家となヱヽけがらはし〱抑四性始つて討ては討れ討れて討は源平のならひ
生かはり死かはり恨をなさで置べきかと思ひ込たる無念の顔色眼血ばしり髪
逆立此世から悪霊の相を顕はす斗也かくと聞より亀井駿河主君の身の上氣
づかはしと追々かけ付取廻せば御幼稚なれ共天皇は始終のわかちを聞し召知盛に向
はせ給ひ朕を供奉し永々の介抱はそちが情けふ又丸を助しは義経が情なれば仇
に思ふな知盛と勿躰なくも御涙を浮給へば典侍の局俱に涙にくれながらヲヽよふ
おつしやつたいつ迄も義経の志必忘れ給ふなや源氏は平家のあた敵と後々迄も此